競技歴わずか3か月でプロテストに合格した期待の女子プロボクサーがいます。トラック運転手としての日々の仕事をこなし近くデビュー戦を迎えます。
富山県内初の女子プロボクサー、石黒紗良さん22歳。ボクシングを始めたのは、実はことし4月。
7月、名古屋市で行われたプロテストに参加し、競技歴わずか3か月で見事合格しました。
もともと6歳からずっと空手に打ち込み、全国大会の常連でした。
2019年の日本選手権では決勝まで進みましたが、惜しくも優勝を逃し、燃え尽きてしまったという石黒さん。
トヤマボクシングジム 石黒紗良さん:
「空手を辞めてから1、2年くらい何もしていない期間があって、でも何かやりたいというのはあって」
空手引退後は、もともと興味があった格闘技を始めようと、1年以上かけて自分にあった競技を探し、トヤマボクシングジムの門をたたきました。
石黒紗良さん:
「空手だとプロが無いので、何がゴールかっていうのが自分の中であったので。プロっていう大きい一番の目標が、近くに明確に分かるっていうのは大きいなと思って…」
午前7時前…「おはようございます」
作業着に身を包む石黒さん。彼女の仕事場です。
記者:
「朝早いんですね?」
石黒紗良さん:
「はい、早いです。でもきょうは遅いほうですね」
記者:
「いつもはだいたい?」
石黒紗良さん:
「いつもは午前5時からなので」
石黒さんの仕事は、富山市の運送会社、オールロジスティクスのトラック運転手です。
石黒紗良さん:
「最初は違うところで働いていて、ことし入ってからこの会社に。わりと最近入ったばっかりです」
ボクシングの魅力に引き込まれ、やるならプロになると誓った石黒さん。練習にしっかり打ち込むため、仕事が終わる時間が早いこの会社に転職しました。誘ってくれたのがいまの上司であり、小さなときから同じ空手道場で汗を流した中尾聡寿さんでした。
空手で10年来の仲 中尾聡寿さん:
「物事に取り組む姿勢というのは、空手のときからすごかったですし、大会もすごく出て優勝していましたし」「最初は本当に半分冗談で(うちに)来てくれたらうれしいなぐらいで誘っていたんですけど、時間早いぶん、その分早く終わるので、ボクシングの練習とかたくさんできればいいかなと思いまして誘いました」
石黒さんは会社に入ってから
▼フォークリフト
▼小型移動式クレーン
▼クレーンに荷物を掛ける玉掛け
▼大型免許
4つの免許を取得しました。
それもすべてはボクシングのため…。
いまでは、荷造りから、搬入先への資材の運搬をすべて一人で行っています。
11月27日には、いよいよプロデビュー戦。今は不安でいっぱいだといいます。
石黒紗良さん:
「試合が決まってからはご飯も結構気をつけないといけなくて、そういう感じの減量は初めてなので、やり方も何が正しいかも分からずに、食べないのは結局栄養が取れないからダメといわれて、でも本当に落ちるかどうかも不安が大きすぎて、本当に大丈夫なのかなみたいな」
仕事中も試合のことが頭をよぎります。搬入先への資材も届け終わり、これから昼食の時間。
試合が決まってから、ずっとこのメニューだといいます。
石黒紗良さん:
「とりあえず鶏肉はできるだけ多く食べるようにしていて、鶏肉とゆで卵がタンパク質が多く、ある程度入っているものを選ぶのと、ヨーグルトは食べるときは脂肪分ゼロって書いてあるのを見ながら」
記者:「何キロ落とさないといけない?」
石黒紗良さん:
「自分はあと1.5kgぐらいで、そんなにほかの人に比べたら全然少ないと思う。大人になってから食べなくなった分、飲みによくいくようになったので…(飲めないのが)それが一番きついです。自分的には」
仕事が終わり、この日は2時間半ほど、休憩をとったあと、午後7時から練習。
このジムに所属する女性のプロボクサーは、石黒さんを含め2人。スパーリングの相手は、ほとんどが男性プロボクサーたちですが、必死に食らいついています。
空手で培った左ストレートのパンチは、一撃必殺の威力があります。
石黒紗良さん:
「左のストレートを一番伸ばしているというか。それで(相手を)倒したい」
また、トレーナーの白川さんは、石黒さんをこう評価しています。
トヤマボクシングジム 白川亮トレーナー:
「やっぱり、フットワークが良くてリリズミカルですね。動きが俊敏で、出入りが頻繁にできる足の強いボクサーだと思います。あとは目もいいですね。相手のパンチをビビらずにずっと見ていられるので」
白川亮トレーナー:
「パンチをガーッともらったときに、打ち合いになったときに、ガードが下がる。接近戦でね。そのときにパンチもらったらなおさらさ下がってしまう」
石黒さんのいまの課題は、接近戦で打ち合ったとき、ガードが甘くなること。
デビュー戦にむけて修正中です。
トヤマボクシングジム 石黒紗良さん:
「結構周りの人に応援してもらったり支えてもらったりしているのを一番感じているので、その人たちに、結果だけじゃなくて楽しんでもらったりとか、見ている人に少しでも興味を持ってもらえるような試合ができればと思っています」
大きな期待と支えてくれる人たちへの感謝を胸に11月27日、地元富山でデビュー戦のリングに立ちます。
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