「牛にとってかなり負担になってます、この暑さが」

こう話すのは、祖父の代から60年以上、酪農を営む「つだ牧場」の津田恵美さんです。この夏、人だけでなく動物たちへの暑さ対策も必要に迫られています。

30年前は「数台の扇風機だけ」 今では…

熊本県大津町にある「つだ牧場」では、約250頭の乳牛を飼っています。牛の平熱は38.8℃ほどと人間よりも高く、寒さには強いものの暑さには弱い生き物です。

大津町を含む菊池地域は元々、夏は涼しい場所。全国4位の牛乳の生産量を誇ります。

そのため30年ほど前は数台の扇風機だけで済みましたが、近年は暑さが厳しい日が増え、気温が35℃を超えると、搾れる牛乳の量が2割から3割減るということです。

実際に「つだ牧場」でも、息苦しさや食欲減退など熱中症の症状が表れる牛もいるため、シャワーを設置して1日3回エサの時間に水を浴びせたり、大型扇風機を設置したりするなど、対策に必死です。

つだ牧場 津田恵美さん「搾れる牛乳の量が暑いと少ないので、消費者に届ける量が減ってしまう」

「トリプルパンチ」の夏

この牧場ではエサとなるトウモロコシも栽培していますが、菊池地域では高騰する飼料価格の影響を受けている酪農家もあり、暑さや近年の牛乳の消費量の減少も加わって、「トリプルパンチ」だと言います。

また2年前に500万円ほどかけて設置した大型扇風機も最近は価格が高騰していて、新たに設置するなら、厳しい経営環境が続く酪農家には大きな打撃です。

そのため、JA菊池の酪農部会で部会長も務める津田さんは、国や熊本県に、大型扇風機を設置する場合の補助などを求めています。

つだ牧場 津田恵美さん「1万円や2万円でできる設備投資ではないので、金銭的にも厳しい。これを行わなければ牛乳を搾れないのが現実なので、そこを分かってほしい」