大阪・関西万博で“異例”の再フライトに挑んだ航空自衛隊のブルーインパルス。“大阪の空”に夢を抱いた1人のパイロットと、その家族に密着しました。

今月12日、関西国際空港から飛び立った航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」。パイロットたちが目指したのは、大阪・関西万博が開催されている夢洲会場です。

ブルーインパルスが万博会場で展示飛行を行うのは、35年ぶり。今回、この飛行に特別な想いを抱く1人のパイロットがいます。

松浦翔矢 一等空尉
「YouTubeでブルーインパルスを見たのが(パイロットを志した)きっかけでした。衝撃でした。『かっこいいな。こんな仕事があるのか』と知り、そこから(パイロットを)目指しました」

大阪で育った松浦さんは、15歳の頃から地元の空を飛ぶことを目指してきました。

ブルーインパルスの任期は通常3年。今回の万博が大阪で開催されることを知った松浦さんは、自分で操縦できる“2年目”にタイミングをあわせて、部隊への配属を志願しました。

本来、今年4月の万博開幕にあわせて飛ぶ予定でしたが、天候不良のため急遽中止に。

松浦翔矢 一等空尉
「残念な気持ちもありますが、2025年度のブルーインパルスとしては始まったばかりですので、(これから)多くの方々に良い演技を見てもらえたら」

しかし今年5月、愛知県での自衛隊機墜落事故を受けた飛行見合わせなどにより、ブルーインパルスの飛べない日々が続きました。そんななかでも、万博での飛行を望む多くの声があり、再フライトが決定。一度中止になった飛行が、再び行われるのは極めて“異例”です。

松浦翔矢 一等空尉
「こうやってリベンジという形で2度目の機会をいただいたので、そこでは必ずいいフライトができるようにしっかり準備していきたい」

今月11日、大阪・関西万博でのブルーインパルス「リベンジ」の前日、松浦さんの姿は大阪の実家にありました。

家族と過ごす、つかの間の休息です。

松浦隊員の妻 佑佳さん
「これ撮ってもらおう。ひどい納豆巻き」
松浦翔矢 一等空尉
「食べたら一緒やんな」

松浦さんが、今回のフライトに思いを込めるもう一つ理由、それは妻の佑佳さんと1歳の娘・菜乃ちゃんの存在です。2人とも、松浦さんの展示飛行を見たことがありません。

松浦隊員の妻 佑佳さん
「ここまでいろんなことを乗り越えてきたので。(夢に向けて)頑張ってきたから、それを見届けたいなって。見届けてあげたい」

松浦翔矢 一等空尉
「フライトできない日々が続いて、久しぶりにフライトできたときには、やっぱり『フライト好きなんだな』って自分自身感じたところ。家族も普段から応援して支えてくれるので、実際に見てもらえるのはすごく嬉しい。(家族にも)喜んでもらえたら」

そして迎えた、当日。会場では2人もその瞬間を待っていました。

6機のブルーインパルスが飛び立ちました。

子どものころからの“夢の舞台”、大阪の空をおよそ20分かけて周遊。夢洲会場は、もう目の前。

万博のシンボル大屋根リングの上空に、6機のブルーインパルスが姿を見せました。

およそ15分間、万博をイメージした編隊飛行を次々と披露。松浦さんの夢が叶った瞬間。

この日の飛行は佑佳さんと菜乃ちゃんにとっても、かけがえのないものになりました。

松浦隊員の妻 佑佳さん
「彼自身が『ブルーインパルスを見たことない人や知らない人に、今回の万博をきっかけに届くといいな』って言っていて、この歓声とか初めて見ますという人もいらっしゃって、ブルーインパルスを知らない人とか見たことない人に届いたんじゃないかなと考えてたら、めっちゃジーンときました。勇姿を見れて満足です」

フライトを終えた松浦さんたちにも笑顔があふれました。

松浦翔矢 一等空尉
「思った以上に自分がこの日に向けてわくわくしている感じがあったので、天気に恵まれて本当に飛べたのでよかった。いつも支えてもらっているのは家族の存在なので、家族に恩返しになったらいいな。(これからも見てくれる人に)夢・感動・希望、そして笑顔を届けられたらいいなと思います」

松浦さんとブルーインパルスの挑戦は、これからも続きます。