宮沢賢治の初期童話作品「とっこべとら子」をテーマにした企画展が花巻市の宮沢賢治記念館で開かれています。

「おとら狐のはなしは、どなたもよくご存じでせう」で始まる宮沢賢治の童話「とっこべとら子」。大正10年から11年にかけて書かれました。

賢治の作品の中では比較的初期の作品になります。
盛岡地方に伝わる「斗米(とっこべ)とらこ」の伝承をモチーフにしているこの童話。伝承では狐にだまされる人間が描かれていますが、賢治は「狐がだますのではなく、人が勝手に誤るのだ」と、人が欲や権威にとらわれ、踊らされる様子を風刺しています。

会場には「とっこべとら子」の作品のモチーフになった伝承の舞台である盛岡市紺屋町、葺手町の地図や写真、表紙を入れて12枚の自筆原稿(レプリカ)が展示されているほか、「とっこべとら子」以外で狐が登場する賢治作品紹介されています。

自筆原稿の賢治の筆跡は、美しい文字ではないものの、読みやすく、作品の楽しさが伝わってくるような味わいのある文字で、賢治が懐かしい盛岡の街を思い出し、心を躍らせながら執筆していたことが伝わってくるようです。
宮沢賢治記念館上席主査学芸員の宮澤明裕さんは「(賢治の)狐を題材にしたほかの作品には切ない内容のものもあり、『とっこべとら子』はそのような作品と読み比べるのも面白いです。是非、企画展に足を運び、賢治作品について理解を深めるきっかけにしていただければ」と話していました。

この企画展は9月28日(日)まで行われています。
また7月19日(土)~27日(日)、8月9日(土)~17日(日)、9月2日(土)~9月23日(火・祝)の期間は、レプリカの自筆原稿ではなく、直筆の原稿が展示されます。