スタート時は「コロナ真っ最中」

ーー西田さんには以前インタビューをしていて、ジップエアがホノルルに就航した2020年12月のすぐ後。あの頃はコロナで大変だったのでは

『ジップエアトーキョー』西田真吾社長(57):
「コロナの真っ最中に飛行機の商業運航を始めたから、最初のバンコク線は貨物で始めた。国境が閉ざされていたので貨物を運ぶしか手段がなかった」

貨物の収入でコロナを乗り越えたジップエアはその後、旺盛な訪日外国人客需要を取り込み成長軌道に乗せてきた。

西田社長:
「2020年に商業運航を開始して、2022年7月に初めて単月黒字を出すことができた。長いと言えば長かったが、おかげさまでそれ以降は毎年黒字を出せるようになり、2024年度には累積損失も解消することができた。ビジネスとしては順調と言ってもいいかなと思う」
▼2024年度決算:「旅客収入」685億円(前年同月比26.8%増)

ーーLCCといえば短距離が当たり前という時代に、中長距離LCCのビジネスモデルがうまくいった理由は?

西田社長:
「当初から“海を渡る初めてのLCC”になろうと。太平洋を渡るLCCが当時なかったので、我々が1番手になるぞというつもりでビジネスモデルの設計をした。我々の利点は成田がアジアの1番東側にあるところで、アジアの国と北米の国々を結ぶ結節点になる。この需要はコロナで一時縮小したが元々は大変な成長が見込まれている路線。自分たちで言うのもおかしいが、狙いはかなり的確だったと思う」

機材増やし「目指すは米・東海岸」

快適な空の旅を、より多くの人へー
その挑戦を加速させる、次の一手も動き出している。

ジップエアでは2025年7月現在で8機をやりくりし10路線をカバーしているが、2026年度までに2機を追加し10機体制に。
さらに2027年度以降は現在の運航機材よりサイズの大きいボーイング787-9を10機程度増やし、計20機規模にする計画を掲げている。

西田社長:
「まだ就航してないアジアの大都市、北米の大都市がたくさん残されている。日本の乗客からも『ニューヨークはいつ飛んでくれるの』と聞かれることもあり、期待されるところには需要がある。まだまだ伸びる先はある」

ーー創業から社長をされているが、ジップエアの存在価値はどこにある?

西田社長:
「今までやらなかったことをやってくれる航空会社と理解してくれている乗客も多い。そういう乗客のニーズを更にかぎ取りながら、『こういうものを用意したがどうでしょうか』と提案をどんどんしていく企業であり続けたい。“ユニークな存在であるポジション”を守っていきたい」

増加する「中長距離」ニーズ

“中長距離のLCCを”というユニークな発想から始まったジップエア。

【ジップエア】
▼基本運賃はシンプル
▼必要なものだけ有料で追加(機内食・手荷物)
▼無料Wi-Fi
▼燃油サーチャージなし
▼中長距離国際線に特化

「マーケットが大きく変わった時にどううまく対応できるかがLCCのポイント」と話す『東京大学』名誉教授・伊藤元重さんは、ジップエアをどう見るのか。

『東京大学』名誉教授・伊藤元重さん:
「元々のLCCは<短距離>で<できるだけ安く>というところから、サウスウエスト航空のモデルが出てきたが、今はやはり中長距離の需要が増えている。もう一つ大きいのはフルサービスキャリアの料金が上がっているので、長距離をもう少し安くというニーズ増にうまくはまった感じ。インバウンドで賄っている部分もあると思うが、逆境の中でここまでやれたということは今後環境が良くなれば、さらに飛躍のチャンスがあるということかもしれない」

(BS-TBS『Bizスクエア』2025年7月12日放送より)