ダイヤモンドリーグは単日、または2日間開催では世界最高レベルの陸上競技会で、今年は4月16日の厦門(中国)大会から8月27~28日のチューリッヒ(スイス)大会まで15大会が開催される。6月にはローマ大会(イタリア・6日)、オスロ大会(ノルウェー・12日)、ストックホルム大会(スウェーデン・15日)、パリ大会(フランス・20日)と4大会が行われた。ストックホルム大会では男子棒高跳のA.デュプランティス(25、スウェーデン)が6m28と、自身の持っていた世界記録を1㎝更新。9月の東京2025世界陸上で人類初の6m30オーバーへの期待が膨らんだ。6月のダイヤモンドリーグでどんな記録が生まれ、どんな好勝負が展開したかを紹介する。

自身12回目の世界新は初の地元での更新

レンガ造りの塔が歴史を感じさせるストックホルムのスタジアムは、多くの世界記録が誕生してきた競技場である。

6m00をK.マーシャル(28、豪州)が失敗し、優勝が決まるとデュプランティスは6m28にバーを上げた。自身が2月に室内で出した6m27を1cm上回る高さだ。20歩の助走から力強く踏み切り、倒立姿勢から勢いよく上空に体を放つ。バーは僅かに揺れたがしっかりと残り、デュプランティスは自身12回目の世界新記録を達成した。初の地元での世界記録更新は、いつもと違った感慨があったようだ。

「スウェーデンにはたくさんの家族がいます。初めてこの競技場で跳躍したのは11歳の時で、雨も降って寒いコンディションでした。4mに少し届かない記録でしたが、小さい頃の自分にはそれなりの高さでしたね」と世界陸連サイトにコメントしている。

デュプランティスが初めて跳んだ世界記録は6m17で、20年2月のこと。そこから1cm刻みで世界記録を更新し、2年後の22年3月には人類初の6m20をクリアした。そして今、6m30まで2㎝と迫っている。

「技術的には今の跳躍と、6m30の跳躍は大きな違いはないと感じています」

デュプランティスは過去、22年世界陸上オレゴン、24年のパリ五輪と、大舞台でも世界記録を更新してきた。7~8月にもう一度世界記録を更新すれば、9月の東京2025世界陸上で6m30に挑戦することができるだろう。

今季世界最高が9個誕生 女子5000mのチェベトは世界歴代2位

デュプランティスの世界記録を含め、今季世界最高記録が9個、6月のダイヤモンドリーグ4試合で誕生した。

ローマ大会では男子100mのT.ブロメル(29、米国)が9秒84(追い風1.1m)、女子5000mのB.チェベト(25、ケニア)が14分03秒69。オスロ大会では女子10000mのY.ブレティ(18、エチオピア)30分28秒82、同3000m障害のF.チェロティチ(20、ケニア)が9分02秒60。ストックホルム大会では男子800mのE.ワニョニイ(20、ケニア)が1分41秒95、同400mハードルのR.ベンジャミン(27、米国)が46秒54。そしてパリ大会では男子1500mのA.アブズ(32、フランス)が3分27秒49、女子3000m障害のチェロティチが8分53秒37。

世界歴代順位が高いのは女子5000mのチェベトで、14分03秒69は世界歴代2位、G.ツェガエ(28、エチオピア)が23年にマークした14分00秒21に迫った。

「14分15秒が目標でしたが、体が動くと感じてそれ以上のタイムを目指すことを決めました。今日の結果で、3000mまで良いペースで走る選手がいたら世界記録も出せると思いました。近いうちに14分切りを目指して走ります」

東京2025世界陸上ではF.キピエゴン(31、ケニア)との対決が激烈になる。昨年のパリ五輪ではチェベトが5000mと10000mの2冠、キピエゴンは1500mで優勝し5000mは2位だった。キピエゴンは1500mの世界記録(3分49秒04)保持者で、5000mでは世界歴代3位(14分05秒20)を持つ。2人の対決は東京世界陸上のハイライトの1つになるだろう。