少数与党の石破政権 突然吹いた“追い風”

予算案通過に誰よりも長々とお辞儀。協力してくれた野党には深く感謝。

日本維新の会 前原誠司共同代表
「29年ぶりの」

石破茂総理大臣
「29年ね」

日本維新の会 前原共同代表
「教育の無償化を骨太の方針に入れる。そして社会保険料を下げる改革…」

石破総理大臣
「29年…」

日本維新の会 前原共同代表
「ちょっと私の話を聞いて」

思わず浮かぶ安堵の表情。野党の顔色を窺いながらの国会運営を強いられた「少数与党」の石破政権。

その上…

国民民主党 玉木雄一郎代表
「躊躇なく(内閣)不信任案を出せば良い」

少数与党の石破政権は、野党が一致して不信任案に賛成すれば、「総辞職」か「衆議院解散」を迫られます。そして水曜、国会会期末を前に迎えた「党首討論」。厳しい展開も予想される中、いざフタを開けてみると…

立憲民主党 野田佳彦代表
「物価対策をきちっとどうやってやっていくのかをご説明を聞きたい」

石破総理大臣
「一番困っている方にどうすれば、きちんとした手当が行き届くかを中心に考えてまいりたい」

議論は淡々と進み、会期末の焦点とされた「内閣不信任案」についても触れられませんでした。野田代表は、不信任案提出について「総合的に判断する」としています。立憲民主党の重鎮からは…

立憲民主党 小沢一郎衆院議員(3日)
「(不信任案が)通るかもしれない時にやらないなんて馬鹿じゃないかという話になる。もう野党第一党の資格はない」

ではなぜ、少数与党を追いつめる不信任案が出されないのか、政治ジャーナリストの後藤さんは…

政治ジャーナリスト 後藤謙次さん
「野党が数的優位を全く活用できないまま、目先の自己利益を先に追求してしまった。そこを自民党が巧みに吸い取った」

実は、かつて小沢氏も関わった、前回31年前の少数与党の政権は、野党から不信任案を突きつけられました。

「羽田孜さんを内閣総理大臣に指名することに決しました」

1994年、総理に指名された羽田氏でしたが、指名直後に社会党が連立を離脱。不信任案を提出され、わずか64日という短命政権に終わったのです。

羽田孜首相
「少数与党であることを考えると、新しい安定政権を作ることが大事」

【内閣支持率】
6月:34.6%(先月比+1.3%)

JNN電話世論調査
調査:5月31日(土)・6月1日(日) 対象:全国18歳以上 2385人
方法:RDD方式(固定・携帯) 有効回答:1056人(44.3%)

あれから31年。ところが今回の石破政権は今のところ、不信任案は出されず、支持率もやや回復しています。後藤さんは、その背景について…

政治ジャーナリスト 後藤謙次さん
「石破さんはある面でラッキーなのは天佑といったら語弊があるけど、急に“追い風”が吹いてきた」

では、その追い風とは…

現在、農水大臣を務める小泉進次郎氏。石破政権発足当時は、自民党で「政治とカネ」の問題を担当し、野党の厳しい追及にさらされました。

自民党政治改革本部 小泉進次郎事務局長(3月)
「政治家として活動している中で、明確にオンオフと区切れない瞬間があるのは分かると思う」

立憲民主党 後藤祐一衆院議員
「関係ない話をポエムみたいに言うのはやめてください」

防戦一方の小泉氏。ところが、その矢先、「国難」と評されたトランプ関税によって、「政治とカネ」の問題は置き去りに。さらに…

小泉農水大臣
「いま最も力を入れなければならないのはコメ、とにかくコメに尽きる」

コメ価格高騰が問題になる中、小泉氏は突然、農水大臣に就任。世間の注目は一気にこの問題に集中したのです。この状況に、小沢一郎氏は、SNSにこう投稿しました。

立憲民主党 小沢一郎衆院議員
「石破自民党が狙うのは小泉劇場型政治の再現。争点を一点に絞り、敵を作り、腐敗も失言も裏金も物価高も全部忘れさせる狙い」※小沢一郎(事務所)のXより

なぜ今回、与野党の間から対決姿勢が失われたのか、後藤さんは…

政治ジャーナリスト 後藤謙次さん
「有力野党3党が、個別の利益獲得に動いて、大局的に日本の政治をどうやって持っていくんだという協議が行われなかった。

石破さんも政権維持に軸足を置いて、鵜飼いの鵜匠みたいに野党3党ともそれぞれひもでつながって、『年金制度改革法案』、『103万円の壁』、『高校授業料無償化』、彼らの要求を一つずつ受け入れることによって、政権を微妙なバランスで維持している」

そして後藤さんは、少数与党の政権が抱える問題点を指摘します。

政治ジャーナリスト 後藤謙次さん
「政策ごとに合意しながら政権を進めていく。安定はしていないけど、予算成立までこぎつけた。一番の難点は国家の骨格になるような大きな決定はできない。大きなテーマ設定をして、与野党が徹底議論して制度改革に向かう。それをやれるかどうか」

石破政権の今後はどうなるのか。その行方を占う参議院選挙が来月行われます。