「1195人」。これは、去年1年間に全国の職場で熱中症になった人の数です。過去10年間で、最も多くなっています。
来月から、企業に対して義務づけられる熱中症への対策。働く人を熱中症から守ろうと、県内でも急ピッチで対応が進められています。
呉市に工場のある機械メーカー「新日本造機」です。タービンやポンプなどを製造し、世界80カ国以上に納入実績があります。工場11棟でおよそ200人が作業しています。
新日本造機 迫田浩隆社長
「この工場、特にこの棟はですね、戦前からの建物なんで高さが低くて熱がこもりやすい構造になってるんですよね風が通らないと非常に暑くて、特に梅雨時期になるとジメジメするんで、暑さプラスのそういう湿度でですね非常に熱中症になりやすい」

300度の蒸気で高温作業となる生産ラインもあるそうです。実際に、現場で働く男性作業員は、「溶接の作業は、溶接からの熱気も相まって暑い」と話します。溶接作業では安全上、長袖の作業服や手袋が必要でファンのついた作業服は着用できないそうです。
男性作業員
「ファンがついているのは、溶接からの煙を吸って安全の関係でつけられないんで、その対策が出来なくて」

これまでも屋根を2重にしたり遮熱塗装するなど対策を続けてきました。去年には、従業員が熱中症のリスクに気づけるよう、工場内に掲示板を設置。ここには気温や湿度などから算出される「暑さ指数」が表示され一定基準値に達した場合は、作業を止め、室温の低い休憩室で休ませることにしています。また、今回の義務化をうけて、緊急連絡網を作成。応急処置の方法を定めた上で、医療機関に搬送するまでの手順をまとめ、周知するための社内訓練も検討しています。
新日本造機 迫田浩隆社長
「義務化になるとは思っていなかったが、いずれにしても従業員、働く人を守るためには必須事項だと受け止めています。本当に年々暑くなっていると感じますので、今の対策だけで十分と思ってませんので次々と対策をとっていきたいと思っています」

一方、制度の変更を周知しようと、急ピッチで準備が進んでいる場所があります。企業に必要な熱中症対策について周知しようと、広島労働局と、広島産業保健総合支援センターは共同でセミナーを企画。募集定員を100事業所にしたところ、中小企業から参加を希望する声が多く寄せられ、セミナーは合わせて5回行うことになりました。
広島労働局健康安全課 藤本泰彦課長
「受付を開始してすぐに満席になるというのは今まで行ってきた(別の)説明会でもなかったこと熱中症に対する関心の高さがある」
対策を怠った事業者には罰則が課せられることもありますが、労働局は、まずは制度の目的を理解してもらいたいとしています。
広島労働局健康安全課の藤本泰彦課長
「対応していない事業者に6月1日からどんどん罰則を適用していきますということではなくて、目的は熱中症を重篤化させずに死亡災害を防止するということ」
労働局は今後、労働基準監督署などとも協力しながら、あらゆる機会を通じて周知をはかっていきたいとしています。
あらためて、今回の熱中症対策の義務化のポイントをまとめました。
対象となるのは、▼暑さ指数28以上または気温31度以上の環境で、▼連続1時間以上、または1日4時間を超える作業です。
対策を怠った場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
具体的に義務づけられているポイントは主に3点。▼熱中症の自覚症状がある人や疑いのある人がいた場合の連絡体制を整備すること。▼処置の方法や重症化を防ぐ手順を定めること▼対策の内容を労働者に周知することなどがあげられています。
暑さが本格化する前に、働く人の命を守る”早めの対策”が必要です。