博多の文化とともに歩んだ40年

新開さんが生まれ育ったのは、土居町本店のすぐそば、博多区店屋町。

かつてこの一帯、いわゆる旧博多部は、商店街や問屋、百貨店が並ぶにぎやかな福岡の中心地でした。
一方で、祭りや伝統行事を大切にし、近所づきあいが息づく地域。

その風土を感じながら新開さんも幼少期を過ごしました。

本格的に地域の輪に深く関わるようになったのは、この地に店を構えてからのこと。

特に、7月に開催される博多祇園山笠には親子で参加し、その時期になると「オーナーがいなくなるんです」と笑いながら話す常連客もいます。

取材時に店内に居合わせたお客さんの「シャポー」での思い出にも、博多祇園山笠のエピソードが多く登場しました。

「25年前、息子さんに山笠を紹介してもらって、この店で初めてご挨拶したのが今でも印象に残っている」と語る男性や、「(博多祗園山笠のクライマックスで早朝に行われる)追い山の日、夜中に開いていたので、コーヒーをいただいた」という女性も。

今回、本店の閉店により、シャポーは中央区天神の複合ビルの一角で最後の営業を続けます。

しかし、新開さんにとって、博多のこの地に本店があったことは、自身の人生そのものであり、これからの世代へと手渡したかった、かけがえのない”自分と地域の居場所”でした。