台湾の半導体製造大手TSMCの進出に伴い、熊本県菊陽町では交通渋滞が激しさを増しています。さらに「抜け道」となっている生活道路では事故多発。課題と対策に迫りました。

5月20日、菊陽町光の森を通る県道316号は、多くの車で流れが悪くなっていました。

記者「午前7時すぎの光の森駅周辺です。車はゆっくりと進んではいますが長い列が出来ています」

ただ、周辺の道路では、これが毎朝の光景です。

自転車通勤の男性「渋滞がひどくて自転車の方が早いかなと思って」
徒歩通勤の女性「土日もすごいんですよね。土日は家から出られないくらい渋滞が…車はどんどん増えてきていると思います」

菊陽町のタクシー会社も渋滞に頭を悩ませていました。

菊陽タクシー 藤本剛史社長「10分15分で行くところが、30分40分かかる。20分前に配車しているのに客の元へ間に合わないとかあるので」

渋滞が激しく、迎えの時間や運行時間の予測が困難に。配車が間に合わず予約を断るケースも出ています。そして、最近はこんな問題も・・・。

菊陽タクシー 藤本剛史社長「ナビが発展しているので色んな道を色んな人が通っている。抜け道が抜け道でなくなっている」

このタクシー会社によりますと、幹線道路に加えて「抜け道」となってしまった生活道路などでも渋滞が深刻になっていると言います。

さらにその「抜け道」では交通事故も相次いでいます。

これは防犯カメラがとらえた映像です。軽トラックが直進していると…。左からきた原付バイクが一時停止せずに衝突。バイクの運転手は体が投げ出されますが、すぐに起き上がり大事には至らなかったようです。

国道57号と旧57号を結ぶこの交差点は、事故多発エリアです。

地域住民「ひどい事故多いですよ、横転したり、向こうに突っ込んだり。死亡事故が無いのが幸いだなと思っています。子どもの自転車対車というのも、すごく多いです。どうにかならないかなって思いますけど…」

商業施設が増えたことで、この通りも交通量が増加しました。所轄の大津警察署によりますと、2024年に管内で起きた人身事故は156件で、熊本市内を除くと県内で最も多く、2025年もすでに菊陽町では45件の人身事故が起きています。

地域住民「県内で1番か2番に事故が多い交差点と聞いたことがある。危ないですここ。走っていても危ない、横断歩道もないし、危ないと思う」

菊陽町も交通量の増加を深刻に受けとめ、実態把握を進めています。

これは、町が4月に実施した渋滞調査の様子です。職員たちが交差点から伸びる車列の長さを確認し、渋滞の状況を撮影していました。そして、この調査でも「抜け道」の交通量の増加が明らかになりました。

調査員「去年よりも列が長くなっている」

企業と連携した時差出勤の推進など、TSMC周辺の渋滞緩和に町も知恵を絞っていて、ハード面の対策も少しずつ進めています。

その1つが菊陽バイパスにつながる町道の交差点改良工事です。夕方の時間帯は、TSMC方面から熊本市方面に右折する車が多く、渋滞が発生していたことから、2024年12月に右折レーンを伸ばし、2車線化しました。

菊陽町建設課 三船潤治係長「以前は橋の上まで渋滞していたが、今は青信号1回で車が掃けるようになった」

年内にはTSMCの第2工場の建設も始まる予定で、渋滞対策のスピードアップが求められます。

菊陽町建設課 三船潤治係長「道路整備には時間がかかるので、このような交差点改良工事など、やれるところから取り組み、渋滞緩和に向けて頑張りたい」