4年前、名古屋の入管施設で亡くなったスリランカ人の女性の遺族が国に対し、亡くなるまでの様子を記録した施設内の映像を全て開示するよう求め、訴えを起こしました。映像には女性の死をめぐり、重要な場面が記録されている可能性があります。
ウィシュマさん(2021年2月24日)
「あぶぶぶぶぶ」
収容された部屋のベッドでうめき声をあげる女性の姿。スリランカ人の女性、ウィシュマさん(当時33)が4年前、名古屋の入管施設で亡くなる直前の映像です。
ウィシュマさんはビザを失い、入管に収容されていましたが、亡くなるおよそ2か月前から嘔吐を繰り返し、点滴や入院を求めていました。

死亡する3週間前の検査では「飢餓状態」を示す値が出ていたことがわかっていますが、点滴などを受けることができませんでした。
国は死因を「病死だが、具体的ないきさつを特定することは困難」としています。
「痩せている」
当時、スリランカから来日し、ウィシュマさんの変わり果てた姿を目の当たりにした妹たち。翌年、遺族は入管が適切な治療を提供しなかったとして、国に対し、裁判を起こしました。
そして、きょう新たな動きが。妹たちが向かったのは東京地裁。ウィシュマさんが亡くなる様子を記録した全ての映像の開示を求め、新たな裁判を起こしたのです。
ウィシュマさん(2021年2月23日)
「バケツ」
国は295時間の映像を保管していますが、これまでに遺族側に開示したのはわずか5時間です。
ウィシュマさん(2021年2月23日)
「病院に持って(連れて)行って、きょうお願い。担当さん、セーライン(点滴)、セーライン(点滴)」

入管の職員は、一連の訴えを一時的に収容が解かれる「仮放免」を目的とした「誇張やアピール」と受け止めたといいます。
ウィシュマさんの妹 ワヨミさん〔32〕(今月15日)
「5時間の映像を見ただけでも、残りの290時間にとてもひどい場面が写っているのではないかと思っています」

実は国の調査報告書には、ウィシュマさんに対し、職員が「鼻から牛乳や」と発言したり、「ねえ、薬きまってる?」などと不適切な言動を繰り返していたことが記されています。しかし、こうした様子を記録している映像は一切開示されていません。
さらに、遺族が不可解だと考えているのは、亡くなる当日の映像です。調査報告書には、職員が朝8時に「血圧が測れない」と発言したというやりとりが記されていますが…
入管の職員A(2021年3月6日午前8時台)
「測れない?」
入管の職員B
「あ、いけました。なんか動いている」
映像はここですぐにその6時間後に切り替わり、写っていたのは、呼びかけに一切反応しないウィシュマさんの姿でした。
入管の職員(2021年3月6日午後2時台)
「(ウィシュマ)サンダマリさん!」
ウィシュマさんの妹 ワヨミさん
「開示されない映像には姉にひどいことをしている、見せられない・隠していることが写っているのではないでしょうか」
入管庁は取材に対し、「映像には保安・警備体制が記録されていて、(開示は)秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」としています。

ウィシュマさんの妹 ワヨミさん
「家族にとっては、映像が姉を感じられる唯一のものです。死ぬ時に何もしてあげられなかった。だからせめて、ビデオを介してその場に行きたい。姉の“最期”を知りたい」