4月26日に米軍嘉手納基地に配備された米海軍の無人偵察機「MQ-4トライトン)」
すでに嘉手納基地に配備されている無人偵察機「MQ-9」と比較すると「MQ-4」は両翼が約2倍の40メートルもある大型の機体です。
「MQ-9」は比較的低い高度から偵察するのに対し「MQ-4」はさらに高い高度から偵察にあたります。配備の背景や懸念点を専門家に聞きました。
▼上江洲まりの記者
「今大きな機体が嘉手納基地に姿を現しました。無人偵察機MQ-4の無期限の配備が始まったことになります」

今月26日、アメリカ海軍の大型無人偵察機「MQ-4トライトン」が嘉手納基地に飛来し、”無期限”での配備が始まりました。
▼嘉手納町民
「やっぱり今までと違う飛行機で怖いですね、無人ということで」
「これが来たからじゃなくて、日々が大変」
配備に先立ち沖縄県は反対の姿勢を示していました。
▼玉城デニー知事
「基地負担の軽減が進まない中のMQ-4の展開については、新たな基地負担になることとして、一時展開に係る去年6月の要請においても沖縄県内への展開を行わないよう求めていたにもかかわらず、期限の定めのない形で展開が計画されていることは大変遺憾」
去年5月、嘉手納基地に一時的に配備された際も段階的な常駐化につながらないか県は沖縄防衛局に懸念を伝えていました。
そうした中突如伝えられた”無期限配備”の情報。
▼沖縄県 又吉信基地対策統括監
「去年の段階では、今後そういうのはないというのは確認したんですけど、防衛局はそのときは『分からない』という回答だった。配備するにしても、有人機はその分減らすなどの配慮をしてもらわないと反対するということはしっかり伝えた」
配備に伴い、運用要員として兵士およそ50人程度も嘉手納基地に移駐される見通しで、これまで県が政府やアメリカ軍に対し訴え続けてきた基地負担の軽減は棚上げされた格好です。
今回の配備について、防衛省が説明する最大の理由は―
▼中谷防衛大臣
「南西地域を含む我が国周辺における情報収集・警戒監視・偵察活動を強化していくという観点から、数機のフライトが今後数週間以内に展開期限を定めずに嘉手納基地を拠点に日本に展開をされるということになりました」
防衛省によると、中国海軍の艦艇が尖閣諸島の周辺や宮古島と沖縄本島の間などを航行するのが相次いで確認されています。
また、中国軍の無人機の飛来も相次ぎ、昨年度は30機と、過去最多だった2021年度の4機に比べ7倍以上になっています。
政府はこうした中国軍による活動が「急速に拡大・活発化している」として、日米における情報収集能力の強化が必要不可欠だとしています。
▼沖縄国際大学・佐藤学教授
「アメリカとしてこういうものを配備したということを中国に示すという意味合いはかなりあるんだろうと思います」
アメリカ政治に詳しい沖縄国際大学の佐藤学教授は、海洋進出を強める中国軍に向けたアメリカの姿勢を指摘したうえで、沖縄が抱える問題を次のように強調します。
▼沖縄国際大学・佐藤学教授
「本当に一番大事な問題は、沖縄が対中国の軍事対立の最前線に置かれてそれがどんどん強くなっていくこと」
いま着目すべき”基地負担”の問題は、アメリカ軍による配備の拡大以外にもあると話します。
▼沖縄国際大学・佐藤学教授
「アメリカが沖縄に軍事力強化をし続けるということではないと思う。それに代わる形で自衛隊との統合作戦を展開していく、自衛隊を使うという話になっていく」

県が政府などと対等に議論できることが重要としたうえで、日米の軍事力強化の動きが、沖縄にいびつな環境をもたらしているといいます。
県が訴え続けてきた基地負担の軽減ををよそに変化し続ける周辺の安全保障環境。沖縄の置かれる状況は日々、複雑化しています。
MAQ-4の離着陸時の騒音について、防衛省は最大で70デシベル台で、騒々しい街頭などに相当するとして影響は限定的だとしています。
しかし、住宅地と隣接する嘉手納町への影響は推し量れず、町は「町民の基地負担の増加に拍車がかかる」として配備に反対の姿勢を示しています。