中国で古い街並みを再現した「人工古城」と呼ばれる観光施設が各地に建設されました。ところが、既に廃墟となっているケースも。何が起きているのでしょうか。

岩の柱が織りなす絶景。映画「アバター」のモデルとしても知られる湖南省・張家界の自然保護区です。去年は4000万人以上が訪れ、世界遺産にも登録されています。

観光客
「ここの景色は中国でも唯一無二ですよ」

すぐそばには、こんな場所も。

記者
「昔の街並みを再現した施設ですね」

「人工古城」と呼ばれる商業施設です。2012年から営業しているといいますが、観光客の姿はありません。

記者
「もはや廃墟と言うような状態になっています」

周辺の店舗によると、新型コロナが感染拡大した2020年ごろからテナントが撤退しはじめ、一部が廃墟化。放置されたままだといいます。

古城でホテルを経営する男性は。

古城でホテルを経営
「周りの店が閉店した影響は大きいね。売り上げは半分以下になったよ」

2016年に政府が特色ある街づくりを推奨。

中国メディアによると、同時期に若者を中心とした「国潮」と呼ばれる愛国ブームが後押しする形で、全国に似たり寄ったりの「人工古城」が乱立したといいます。

その数およそ2800か所。甘い見込みがたたって、各地で“廃墟化”しているのです。

大手企業が巨額を投じた「人工古城」も例外ではありません。

市中心部にあるこちらの人工古城は広さ20万平方メートル以上、およそ500億円が投じられました。明から清の時代をイメージした設えで、2021年から営業を始めたといいますが、既に閑散としています。

「ここは風が無いからバドミントンにちょうどいい」

中国メディアによると、当初は年間およそ100億円の売り上げを見込んでいましたが、現実には累積債務が100億円以上に。収入源だったショーやアトラクションは休止が続いています。

近くにあった別の人工古城でも…

警備員
「入れないよ、まだ開業してない」

関係者によると、こちらは不動産不況の影響で資金繰りが悪化。完成を前に工事はストップし、オープンできない状態が続いているといいます。

市民
「私が思うに、計画が不十分なんです。似たような施設がいくつもある。(廃れたのは)コロナのせいじゃないよ」

「愛国」で統制を図る習近平指導部。「国潮」という愛国ブームをもたらした一方で、人工古城はその影の部分を映し出しているのかもしれません。