スポーツのこれからを考えるシリーズ「スポーツのミライ」。ハンドボールの元日本代表で、ヨーロッパでも活躍した銘苅淳さんのコーチング論をお伝えします。競技の技術はもちろん、豊富な語彙力で情熱トークが繰り出されました。

▼アルバモス大阪 銘苅淳 監督
「我々コーチというのは、僕がいるから伸びる選手じゃダメなんですよ。なんでかっつったら、裏を返せば、僕がいなくなったら伸びないから。だからどこに行っても戦えるような選手にするというのはすごく大事だし、自分の手から離れた時に、うわっと伸びていく。そのための土台ってやっぱり大事なんですよ」

ハンドボールの元日本代表、銘苅淳。今シーズン、トップリーグのリーグHに新加入したアルバモス大阪の監督を務めています。



▼指導する銘苅淳 監督(2019年・北陸電力ブルーサンダー所属当時)
「やめない、やめない、ちょっと転んだぐらいでやめないよ。ちょっと転んだぐらいでやめない、必ずシュートまで打つ。そう、そう!そうです!そうです!Muy bien!Muy bien!!(スペイン語:とても良い)ブラボーーーー!!!!」

選手時代から、子どもたちへのハンドボール教室を積極的に開催してきた銘苅監督。日本リーグを経てハンドボールの強豪・ハンガリーに渡り、得点王に。

昨年度は、4年間指導にあたった関西学院大学を55年ぶりの関西リーグ制覇、59年ぶりの全日本学生選手権3位入賞に導きました。

全ては与えない指導 で「考える力」を培う



▼アルバモス大阪 銘苅淳 監督
「環境を整えるのは大事なんですけど、環境を整えすぎてもダメなんですよ、これは絶対で。だから全てを与えることはしません。あえて、お金を持っていても与えませんみたいな。自分の中で考えてやってやってやって、絞り出して、やっと落ちてきた滴り落ちる一滴がポーンって水面に弾んだ時に水紋がワンワンワンって広がっていく。もうその時に『ああ!わかった!!あの時のこれってこのためにやってるんだ』とか、あの時言われたことはこのことだったんだって。分かった瞬間に世界観が広がっていくんですよ。こうやってファンファン、ファン、ファンファンつって。滴り落ちる一滴を見つけた瞬間に、『あんたの人生全然変わるよ』と言いたい。“あるある”を言いたい(笑)」

コーチングについて語りだすと、止まらない銘苅監督。何かに例えて語るのが得意です。

機首が浮くまで粘り強くできるか…… その瞬間がくれば青天井!

▼アルバモス大阪 銘苅淳 監督
「飛行機なんかそうなんだよ。飛行機は向かい風に向かっていくから、最初のよーいドンの加速が、一番エネルギー使う。うーーーーーーんって加速していって、機首がピッと浮いて、ふわっと浮くじゃん、浮力をもらってさ。でも、努力ってそんなもんでさ、努力ってやったらやった分だけ、相関関数があって伸びていくもんじゃなくて、やっぱり結果が出ないときってあるんだよ。だいたい一番エネルギーを使う滑走の時に、みんな諦めるんだよ、本当に。だけど頭がフッと上がるまでが大事なんだよね。そこまで粘り強くできるかどうか。その瞬間が来た時には青天井だからさ、どこにでも行きまーす!!みたいな。びょーーんって行っちゃう」

話題は、中高生スポーツで陥りがちな「バーンアウト=燃え尽き症候群」について。



▼アルバモス大阪 銘苅淳 監督
「この子たち、何の種を持ってます?全部違うでしょう。全部違うの。発芽のタイミングも、開花のタイミングも全部違うんですよ。本来ならば、持っている種が違うから、開花のタイミングもいつかわからないんですよ。本来ならば。だけど、それを一律でコントロールしようとするから、おかしくなっちゃう。中学校は2年半しかないから、高校は2年しかないからって、『やれやれやれやれ』、バーンと圧力がかかってるから、『もういいです。次ではやりません』という話になっちゃう。我々がやっているのはコーチングだから、『あなたがなりたい自分になるためにサポートしますよ』というのが、やっぱりコーチングの本質です」

「プロスポーツ」は結果が全ての世界。でも「人生」は、結果が全てではありません。



▼アルバモス大阪 銘苅淳 監督
「結果が全ての世界で生きてはいるんだけど、結果が全てじゃないよね。そうやってたらね、つまんないよね。ハンドボールで作った実績は助けてくれなくても、ハンドボールで培った自分自身とか、広がった仲間とか、作った思い出って、何かあった時にやっぱり助けてくれると思っている。なりたい自分になっていく過程がやっぱり夢中だよね。夢の中を生きるっていうのは、そういうことだよ。夢の中を生きる、夢中になって生きる。それがなりたい自分に最終的になる。最後は自分の力を持って、自分で自分を成長させて、自分でなりたい自分になっていくというのが大事。ハンドボールはね、手段だからって、いつも思っている(笑)。もう1時間しゃべった、ほら!」

スポーツと向き合った先に、なりたい自分を見つけてほしい。銘苅監督の情熱トークは止まることがありませんでした。