やせたい願望 小学1年生までも

藤森キャスター:
皆さんそれぞれ受け止め、感じ方に違いもあると思います。データをご紹介します。小学生のアンケートで「やせたいと思う」女の子の割合です。小学校6年生は50.5%、小学校1年生でも35.5%が「やせたいと思う」と回答しています。どういうものが影響しているのかと思います。斎藤さんは最近ダイエットされていると聞きました。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
プロテインを飲んでいます。1年半ぐらい筋トレなどダイエットをしていて、食べるものも気にして、約7キロ痩せました。

藤森キャスター:
何を意識しているのですか?

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
メディアとかに出る中で、座り仕事ですし、中年化すると、ちょっとかっこ悪いという意識がないと言ったら嘘になる。カロリーなど、数字で人生を管理するというのは、ある種の快楽であるのは事実だと思います。

好きでそこそこでやっているからいいと思いますが、VTRを見ていても、特に女性がSNSや広告の影響で過食や拒食になってしまうというのは問題だと思います。自分らしく生きられる価値の軸自体は、社会全体としてもっともっと多様化していくべきではないでしょうか。

藤森キャスター:
そうなんですよね。価値を多様化する手法をどうするかということですよね。

美のあり方 ファッションショーでは

小川キャスター:
女性だけでなく男性も、価値観に囚われている部分があるのかもしれないですね。

美の多様化というところで言うと、ファッション界は逆行しているのではないかというデータがあります。Vogue Businessによると、ニューヨーク、パリなどのファッションショーで、ミッドサイズ・プラスサイズモデルの起用が、2024年の秋冬は0.8%だったのが、2025年の秋冬は0.3%と減っています。増えていくと思いきや、揺り戻しと見る節もあります。

吉野さんは2021年に番組で一度取材させていただいていますが、そのときから風潮が逆行している感覚があるのか、むしろ進んでいるという感覚でしょうか。

吉野なおさん:
私は地味に進んでいるとは思います。ムーブメントとしては数年前の方が多様性という言葉が使われていたと思います。SNSを見ているとアパレルブランドのショップでプラスサイズの店員さんが着用イメージを見せていたりするので、ちょっとずつ進んでいる感じがします。

小川キャスター:
確かに、いろいろな体型のモデルさんを、いろいろな媒体で見るようになりました。

藤森キャスター:
時間はかかるというところではありますが、視聴者の皆さんにもアンケートでお聞きしています。「最近の若い女性はやせすぎだと思う?」という質問です。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせると7割を超えます。井沢さんはどうですか。

株式会社 QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
前提として今回の肥満学会の話は、健康上「やせ」を目指し過ぎる危なさの話であって、痩せているのが駄目という話ではないです。太っていることと同じように、やせたくないのにやせているということに悩む人もいる。そのあたりは分けて考えないといけないというのが一つあると思います。

その上で、美の多様化も大事なのですが、その一歩先がもっと大事だと思います。美の多様化というテーマはそもそも美しくあるべき、形はどうあれ美しくあるべきという社会からの要請を含んでしまっている。多様な美があっていいという言葉の中には、でも美しくないと駄目という要請が入っている。

何かしらの美しさがあるべきということは、多様性ではないと思います。本当に多様だったら「美しくなくてもいい」であるべき。個人がどう思うかというのは自由なので、人と切り離された状態で、自分だけのために他人の迷惑にならない範囲で美を目指したり、目指さなかったり、好きにするのが本当の多様性だと思う。

他人に望まないこと、というのが我々のできる第一歩だと思います。「こうあるべき」「この人は太っているから自分の代弁者」「痩せているから私の理想像だ」など、本当はアイドルは痩せたくて痩せているわけではないかもしれない。

そういったことを他人に求め過ぎること自体が、我々の人生を窮屈にしている気がする。自分は自分、他人は他人、価値観が社会が繋がりすぎて流れ込んできてしまうので、一回それをシャットアウトして、自分のために生きるということに注力した方がいいのかなと思います。多様性の罠に陥らないようにしたいです。

小川キャスター:
他者と切り離して自分の軸で自分を見るというのは、SNSがある中で特に難しくなっているようにも感じます。

吉野なおさん:
SNSで1つダイエット投稿を見ると、どんどんおすすめとして出てきて、偏った情報まみれになってしまうので、気をつけていきたいです。

藤森キャスター:
小学生のアンケートで「やせたいと思う」女の子の割合を見ると、小さい子供に対してどういうアプローチをしていけば、痩せなきゃいけないと思わなくて済むのでしょうか?

吉野なおさん:
私は、自分が劣等感まみれの子供だったので、人と比べていたのですが、その子がそこにいていいということを、親や大人世代が伝えていくことが大事だと思う。

今の親世代も痩せたいと思っている方が多いので、「痩せなさい」とお子さんに言っているかもしれない。それが行き過ぎちゃうと、私のようにダイエットに囚われた人生の子も出てきてしまう。

小川キャスター:
どんな声かけ、どんな寄り添い方っていうのが必要になってくると思いますか。

吉野なおさん:
世の中にはいろいろな人がいていいと、小さい頃から伝えていくことが大事だと思います。

小川キャスター:
世の中にはいろいろな人がいていいといった言葉を、どんどん社会に増やしていくということもあるのでしょうか。

藤森キャスター:
斎藤さんはダイエットを無理しないでください。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
そこそこにやっていきます。