新型コロナの患者を輸送する石川県の業務の委託料を着服したとして、1審で懲役5年の実刑判決を受けたタクシー会社の元専務の男の控訴審が開かれました。名古屋高裁金沢支部は控訴を棄却しました。
この裁判は、金沢市のタクシー会社元専務の被告の男(59)が2020年9月からおよそ3年間にわたり新型コロナの患者を療養施設などに運ぶ県からの委託料1億2600万円余りを横領した上、その分の所得税を支払わなかったとして、業務上横領などの罪に問われているものです。
1審の金沢地裁は2024年11月、横領金額が非常に高額で、住宅ローンなどの支出をまかなうために犯行に及んだという利己的かつ身勝手な経緯に酌むべき点はないとして懲役5年・罰金1000万円の実刑判決を言い渡しました。
弁護側は、被告がタクシー会社から受け取っていた給与が極めて少なくいという事情をふまえたうえで、自らの業務で被害額を大きく超える利益を会社にもたらしたなど情状面を主張し、控訴していました。
15日の判決で名古屋高裁金沢支部の増田啓祐裁判長は「被告が待遇などに不満を持っていたとしても正当な手続きによって解決すべきもので、犯行を正当化する事情とは言えない」などとして1審判決を支持し、控訴を退けました。