■25年ぶりにお二人そろって沖縄へ
沖縄県を訪問された天皇皇后両陛下
天皇皇后両陛下が22日から沖縄県を訪問されている。
両陛下そろっての沖縄訪問は即位後初、実に25年ぶりだ。
沖縄本土復帰50年の節目の年に、沖縄と令和皇室の新たな交流が始まった。
■増える「皇后雅子さま」のお出まし 秋の三大行幸啓も

この3年弱の間、新型コロナの影響で多くの行事がなくなったりオンラインになったりする中、それまで好調だった体調が「再び整いにくい状態」(医師団)になられていた皇后さま。
ところが、この夏以降、お出ましの機会が急速に増えている。
「秋の三大行幸啓」とよばれている3つの地方訪問のうち、3つ目となる『全国豊かな海づくり大会(兵庫県)』への出席も、10月21日新たに発表された。
皇后さまの好調を支えるものは何なのだろうか?
■弾丸日程のイギリス訪問、背景にあったのは・・・

ひとつの転機になったのが9月のイギリス訪問だ。
9月17日から20日、天皇皇后両陛下はイギリスのエリザベス女王の国葬に参列するためイギリスを訪問された。
エリザベス女王に深い感謝の気持ちを抱かれていた天皇陛下。
訃報を聞いた瞬間から、参列の気持ちを強くもたれていたという。

一方、皇后さまの同行は、出発直前まで決まらなかった。
約15時間のフライト、2泊4日の強行日程、依然波があるという皇后さまの体調、そしてコロナの感染対策、懸念材料をあげればキリがなかった。
そうした状況の中、両陛下での訪英を決定づけたものはなんだったのか。
宮内庁幹部の一人は、「エイッ」というある種の思い切りのようなものだったと振り返る。
意外な回答だったが、この「思い切った」決断が、たしかに、嬉しい変化を起こしていた。
■「今後は両陛下でのご訪問が前提」、療養生活19年目の決断

イギリス訪問が発表された翌日、宮内庁は、両陛下の地方訪問について次のように発表した。
「これまでは、“体調が許せば皇后さまも”として発表してきたが、今後は“両陛下でのお出まし”を前提としてもらってよい。」
実は、宮内庁はこれまで、両陛下の行事への出席について、陛下お一人の訪問として発表し、「皇后さまについては、体調が許せば出席される」と、条件付きで発表していたのだ。
療養生活19年目の大きな決断の背景を、宮内庁幹部はこう説明した。
「元々出向きたいという気持ちがある中で、予め日程の分かっている地方訪問ならばそれに合わせて体調を整えられる。それを発信できるほどには快復されているということだ」

皇后さまにとって、こうした状況の中でのイギリス訪問はプレッシャーだったに違いない。
しかし、無事に国葬に参列されただけでなく、余裕さえ感じられる場面があった。
全日程を終え、滞在先のホテルを出発される時のこと。
足早に車に乗り込まれそうになった陛下に、皇后さまがそっと声をかけられた。
すると、陛下が引き返し、見送りのホテル関係者と改めて言葉を交わされたのだ。
皇后さまのさりげない気配り。両陛下を一目見ようと何時間も待っていた現地邦人の方々も待っていた甲斐があったことだろう。
引き返し言葉を交わされている間、至近距離で「皇后さま~!」「またいらしてくださいね~!」などと現地の邦人が声をかけていた。
皇后さまは笑顔で手をふったり頷いたりしながら、応えられていた。
医師団は「大きい行事の後や行事が続かれた場合には、お疲れがしばらく残られる」としているが、イギリス訪問後も、予定されている行事すべてに出席されている。
■秋晴れとロイヤルブルーとブルーインパルス
10月1日、天皇皇后両陛下は2年8か月ぶりに地方を訪問された。
栃木で開催された国体の開会式に出席されたのだ。
密を避けるため、皇居からは車で移動。訪問する場所や、詳しい時間が報じられていなかったにもかかわらず、開会式が行われるスタジアムまでの沿道には、奉迎の人たちが十重二十重になり両陛下を歓迎した。

報道陣用の後続バスに乗っていた私は、両陛下が手を振られるために車が減速する回数を数えていたが、10回目ほどで数えるのをやめてしまった。何度も何度も車を減速させ、窓をあけて手を振り応えられていた。
「沿道に人がいるのに、車をすっ飛ばしてしまっては、地方に行く意味がない」というのが陛下の考えだと、側近から聞いた。
開会式では、秋晴れの真っ青な空にブルーインパルスの祝賀飛行が直線を描いた。
鮮やかなロイヤルブルーのスーツに白い帽子の雅子さまは笑顔で空を見上げていた。
令和皇室の再スタートを思わせる瞬間だった。

■「我々は良い時しかお会いしていない」それでも「皇后さまは、必ず輝かれる」

いま、宮内庁の幹部たちが、皇后さまについて口をそろえて言うことが3つある。
1つ目は、「皇后さまになられてからは、その覚悟というのが以前と全然ちがう」ということ。
2つ目は、「人知れず大変な努力をされている」ということ。
そして3つ目は、「我々は良い時しかお会いしていない」ということだ。
好調に見える現在も、依然体調には波があるという。
それでも側近の一人は、「皇后さまは、行けばその場で必ず輝かれますから」と力を込めた。
覚悟をもってひとつひとつの行事に臨まれる皇后さまを、これからもしっかり見続けたい。