岡山県倉敷市の港で去年(2021年)9月、タンカーに引っかかった状態でクジラの死骸が見つかりました。そのクジラが骨格標本になり、1年ぶりに倉敷市に戻ってきました。



巨大な海の哺乳類の体を支える「骨」を間近で見られる貴重な機会です。


(後藤克弥記者)
「身長170センチの私の体よりはるかに長いこちらの骨、クジラの下あごの骨なんです」




巨大な頭骨や、連なった背骨その迫力に圧倒されます。倉敷市の自然史博物館で展示が始まった骨格標本です。


イチョウの葉のような形をしているのは、肩甲骨。重さは4.5キロもあります。


(倉敷市立自然史博物館学芸員 奥島雄一さん)
「こんなに大きかったかな、と改めて思ったんですけど、実は展示室に入りきっていないですね」


「わーすごい、何これ」


去年(2021年)9月水島港で、千葉県からやってきたタンカーに引っかかっているのが見つかりました。



このタンカーと衝突して死んだかどうかはわかっていませんが、海洋事故で命を落としたと見られています。

全長は11.67メートル。太平洋などに生息する「ニタリクジラ」の若いオスでした。


クレーンで引き上げられ、国立科学博物館や岡山理科大学が中心となっての解体作業が行われました。



(岡山理科大学恐竜学博物館 石垣忍館長)
「一生の思い出に残るでしょうね。地球がくれた贈り物。このびっくりを子どもたち、ほかの人たちにも伝えていきたい」



それから約1年をかけて、静岡県の業者のもとで骨格標本となり、倉敷市に戻ってきました。骨を水に浸け、繰り返し温度を変えながら油を抜くという根気のいる作業を経て美しく仕上がっています。

(倉敷市立自然史博物館学芸員 奥島雄一さん)
「クジラの専門の先生の話によると、国内にあるニタリクジラの標本としては一番きれいな標本に仕上がっていると」



(大阪から訪れた親子)
「去年ニュースでやってたような。大きい」

「骨の部分がすごかった」

「(海で遭ったらどうする?)捕まえたい」


背骨には、海洋事故が原因と見られる骨折の痕が…。樹脂で埋めるといったことはせずあえて残したといいます。



(倉敷市立自然史博物館学芸員 奥島雄一さん)
「あの日あの時、水島で死骸が見つかって、それから海洋事故、そういった歴史を物語るたった1つの標本であるという思いから」


別の個体ではありますが、クジラの胃袋から出てきたビニール袋など、海洋ごみの展示もあります。

「私たちの生活の先に、クジラの暮らす海がある」ということを強く感じさせる企画展は、倉敷市の自然史博物館で12月3日まで。


不定期に開かれる展示解説会の時などに骨に触ることもできるということです。
(スタジオ)
頭の骨だけで長さは約3メートル、重さは約180キロあり、搬入には大型クレーンが必要でした。尾びれの付け根の約1.5メートルの部分は展示室に収まりきらないため、今のところ展示できていません。若い個体のため骨がもろい部分が多く、補強も念入りに行われたそうです。