全国の書店員が「いちばん売りたい本」を選ぶ本屋大賞は、今回が22回目となる文学賞です。
全国488の書店の書店員652人による投票で絞られた上位10作品が大賞を目指すノミネート作品となっていて、阿部さんにとっては今回が初ノミネートです。


小説「カフネ」は、弟を亡くした姉・薫子と弟の元恋人・せつなが、反発しながらも、食べることを通じて距離を縮めていく「食と愛の物語」です。

(阿部暁子さん)
「ポルトガル語で『愛しい人の髪に指を絡める仕草』をあらわす言葉ですよね。日本語に訳すのが難しいニュアンスの言葉だとありました」

阿部さんは、薫子とせつなが行き着く結末を言葉にするのが難しいと考えていた時、「カフネ」という言葉と出会い、タイトルに選んだといいます。

(阿部暁子さん)
「友人から『なかなか日本語に訳せない世界の言葉』という本をもらって、その中で『カフネ』という言葉を見つけて、翻訳できないところと、すごく愛がこもっているところがピッタリだなと思ってタイトルにしました」

作品のテーマのひとつ「食」については、書き進めるうちに、書きたいことが変化していったと明かしてくれました。

(阿部暁子さん)
「毎日おしゃれな料理を食べているわけにはいかない、私たちが毎日生きていくと。時間がない時にカップ麺のシーフード味を食べちゃったり。それを買ってくるのもしんどくて栄養ドリンクで済ませちゃうとか。一生懸命、必死に生きている生活の一つだと思うので、ちゃんと食べようということを言いたいのではなく、ちゃんとできていなくても、食べて生きて、働こうとしている、それだけですごいんじゃないか、ということを書きたいことに気付いていきました」
神山AN)「本屋さんで自分の本のコーナーを覗きますか」
阿部暁子さん)「覗きます!先日、家の近くの書店に行った時に『ある~』と思いながら本棚の前を通り過ぎたら、駆け寄ってきた女の人が『これこれ、カフネ』と言って取っていってくれて、帰っていきました。すごくうれしかったです」