“コロナ禍”の教訓を未来につなぐために

感染症法上の分類は2023年5月に2類から5類に変更され、世界は徐々にかつての日常を取り戻したが、その理由は何なのか?
経験に基づく治療法の改善はあっただろう。しかし、いまだに特効薬はなく、ワクチンに劇的な効果も見られない。
コロナ禍の状況を明らかに変えるような要因は存在していないのである。

それでも、世の中はコロナ禍前の世界に戻りつつある。
では、何がそうさせたのだろうか?

それは一人ひとりが抱いている意識ではないだろうか?
新型コロナウイルスへの恐怖に過剰に反応していたために形成された社会の雰囲気が解放されたことで、マスクを外す人が自然と増え、ワクチン接種をしない人にも寛容になってきた。

意識が恐怖に支配され、画一的になれば多様性は失われる。
そして、自分と異なる考え方を受け入れられない、寛容さを忘れた社会が形成されてしまっていたと感じる。
我々はコロナ禍の教訓を深く心に刻み、未来に生かしていきたい。
それは、次に起こるかもしれない感染症によるパンデミックに備えるためだけではない。
我々日本人が、再び同じ道を歩むことのないようにするためでもある。

CBCテレビ 解説委員 大石邦彦