事件直前まで飲んだ酒の種類と量
裁判の最大の争点は、犯行の直前まで飲んでいたアルコールの影響で、廣瀬被告が心神耗弱の状態にあったかという点だ。
事件当日に廣瀬被告が飲んだ酒は以下のとおり
【1軒目の寿司店】
ビール 中ジョッキ1杯 瓶ビール 中瓶1本 ハイボール 中ジョッキ2杯
【2軒目の焼き鳥店】
ハイボール 中ジョッキ2杯 焼酎ロック6杯
【3軒目のスナック】
焼酎の水割りを1杯
事件から3時間後、廣瀬被告の呼気からは、1リットルあたり0.62ミリグラムのアルコールが検出された。
仮に犯行時に調べたらどのような数値が出ただろうか。
検察側は、呼気から推定すると、1リットルあたり0.794~0.896ミリグラム。
飲酒量から推定すると、1.238~2.203ミリグラムの値が出るとの推計を証拠提出した。
飲酒量から推計した「1リットルあたり2.203ミリグラム」という数字は、酒気帯び運転の基準値の14倍にあたる。
弁護側は「アルコール酩酊の影響で日頃の人格とは異なる行動に出ており、心神耗弱の状態であった」として、懲役5年が相当だと主張した
心神耗弱とは、アルコールの摂取などにより、物事の善悪を判断し、それに基づいて行動する能力が極めて低下した状態のこと。
これが認められれば刑法上、刑が減軽される。
しかし、裁判所はこれを認めなかった。
判決
「24時間の勤務を終えて睡眠不足で疲労状態にあった被告人が、
長時間にわたり多量の酒を飲み、
所々記憶をなくすほどの酩酊状態にあったとみられることを踏まえてもなお、
被告人は本件暴行当時、
事理弁識能力および行動制御能力を著しく減退させるほどの酩酊状態にはなく、
完全責任能力を有していたものと認められる」
裁判所が「責任能力がある」と判断した根拠はなにか。