県内の有名企業4社をめぐる商品名や店舗名の商標登録トラブル。出願企業が申請を取り下げて事態は収束しましたが、専門家は、企業が知的財産の保護と積極的活用について考える必要性を指摘しています。

▼観光客「みんな着てる。可愛いなと思って買いました」「ほかの人もみんな着ていて、観光している気分になれる」

観光客に人気の高い、県内企業のロゴをあしらったTシャツ。近年、こうしたロゴや商標を扱ったグッズを製造・販売する企業は少なくありません。

先月、こうした商標をめぐるトラブルが表面化しました。ポーク缶の「TULIP」に飲食店の「Jef」、「キングタコス」、塩製品の「シママース」。県民に高い知名度のあるこれらの商品名、店舗名の商標登録が、第三者によって無断で出願されたと企業4社が異議を唱えたのです。

商標登録を出願したのは、販促グッズやノベルティの製作を手掛ける企業、琉球ワークス。RBCの取材に対して岩月昭雄社長は、「商談の中で商標登録を勧めたが、登録がなかったため、4社に代わって特許庁へ申請を行った。時間をかけて説明して、理解を頂くべきだった」とコメント。

琉球ワークスは出願取り下げを申請し今月7日までに正式に取り下げられました。

一方、4社の代理人を務める福本龍之介弁護士は「琉球ワークスから商標登録を勧められた事実はない」と反論。4社に無断で出願されたとしたうえで今後は4社が独自に商標登録の出願を進める意向だとしています。

第三者による商標登録の問題点とは何なのか。

西平守秀弁理士によると商標とは本来、自社の商品やサービスを他社のものと区別するために使用するもので、登録がなければ誰でも出願できます。

ロゴなどを使っている当事者に無断で第三者が商標登録すること自体は違法ではありませんが、ただ、その第三者が後に企業などに対して「商標権の侵害」を訴え、権利を買い取るよう求めて金銭を要求したり、ライセンス収入を支払うよう持ちかけたり、といったケースがあると言います。

第三者に商標を使用されたくないというだけなら先に商標登録を済ませれば良いですが、西平弁理士は自社のブランド価値を高め、発展させるための戦略的なツールとして商標を活用すべきだとしています。

今回の4社のケースではその商品名や店舗名が、本来の領域を超える価値を持ったために起きた、とみることができます。人気のオリオンビールロゴに代表されるように、沖縄独特のものに様々な価値が見い出されるようになり、企業が気づかないところで価値が生まれている場合があります。

企業が自らその価値に気づきグッズ販売など本業とは異なる展開に商機があるのであれば、戦略的な商標登録が必要になってきます。

今回の問題は県内企業が知的財産について見直すきっかけになるかもしれません。