2024年のアメリカ大統領選のゆくえを占う中間選挙まであと1か月だが、バイデン政権の支持率は43%と低迷している。背景の一つが歴史的なインフレだが、一方で労働市場の好調など追い風も吹き始めている。また、トランプ前大統領の影響も見逃せない。選挙結果を左右するさまざまな要素を専門家とともに分析する。
■有権者の最大の関心事「インフレ」の今後は?

中間選挙は4年ごとに行われる大統領選挙の中間の年に行われ、下院の全議席と上院の3分の1の議席が改選される。結果がバイデン政権の今後に大きな影響を与える重要な選挙だ。
現在、上院では民主党と共和党の勢力が拮抗しており、11月8日の中間選挙に向け、バイデン大統領とトランプ前大統領が非難の応酬を繰り広げている。
大統領就任から最初の中間選挙は、政権への通信簿の意味合いが強く、与党が議席を減らす場合が多い。バイデン政権の支持率は一時36%台まで落ち込んだが、現在は43%まで持ち直した。依然低迷が続く理由は、国民生活を直撃している歴史的なインフレだ。
食品コストが上がる一方、多くの人の収入は上がらないままであるため、フードバンクが提供する食品や日用品などを求めて多くの人が詰めかけている。フードバンク利用者からは「バイデン大統領はインフレが国民に及ぼす影響にもっと注意を払うべき」という声が聞かれる。一方、政権に追い風も吹き始めている。
バイデン政権は8月に日本円で約60兆円規模のインフレ抑制法と、約7兆円を投資する半導体投資法を立て続けに成立させた。
9月の失業率は3.5%と前月から減少し、労働市場の好調が続いていることもプラス材料だ。
■最新の情勢とトランプ氏の影響
さらに共和党支持層の切り崩しにつながる要素もある。トランプ政権下で保守派が多数となった連邦最高裁が2022年6月、中絶の権利を認めた判決を覆した。これを受け、共和党が強い州では中絶が事実上禁止されてきており、共和党の穏健な支持者の間で反発が広がっているのだ。
支持率が低迷する中、吹き始めた追い風でバイデン政権は逆境を押し返すことができるのだろうか。TBSワシントン支局の土居一雄記者に聞いた。
――中間選挙までいよいよあと1か月となったが、最新の情勢はどのようになっているのか。
ワシントン支局 土居一雄記者:
連邦議会下院は、野党共和党が優勢に戦いを進めており、過半数を奪還する可能性が高いと見られています。一方で、大接戦となっているのが上院です。当初は上院も共和党が過半数を奪還するのではと見られていたのですが、与党民主党が激しく巻き返しており、民主党が現状の50議席を維持、あるいは51さらには52議席まで積み増すのではという見方も出始めています。
政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の7日時点の予想獲得議席は、上院で民主党が46議席、共和党が47議席となっており、ノースカロライナ州やネバダ州など残る7つの接戦州をどちらが勝ち取るかが焦点です。
――選挙に向けて国民の関心は?
ワシントン支局 土居一雄記者:
国民の懐を直撃しているので、有権者にとってはインフレが最大の関心事です。10月13日に発表される最新の消費者物価指数で伸び率の鈍化が確認されれば、民主党にとっては追い風になりますし、逆に横ばいやほとんど下がらないという内容であれば、一気に逆風にさらされることになります。
――トランプ前大統領の動きがどういう影響を与えるかというのも、見どころとなるのか。
ワシントン支局 土居一雄記者:
トランプ氏は10月も2日に1度のペースで集会を開き、自らが推薦する候補の応援に入っています。トランプ氏が推薦する候補は接戦州で苦戦を強いられていることも多く、トランプ氏から距離を置き始めた人もいます。そして、距離を置き始めた候補の支持が伸びたというデータも出ています。今回の中間選挙は、トランプ氏の共和党内での影響力や2年後の大統領選挙に向けたシナリオにも大きく影響を及ぼすことになりそうです。