愛媛県の伊方原子力発電所3号機について、広島県の住民などが運転の差し止めを求めた裁判で、広島地裁は5日、運転の差し止めを認めず、原告の訴えを退けました。
この裁判は、愛媛県伊方町にある四国電力伊方原発3号機の運転差し止めをめぐり、およそ9年にわたって審理が続けられてきました。原告は広島県に住む被爆者など337人で、「地震や噴火に対する原発の安全性が確保されていない」などとして運転の差し止めを求めて提訴。被告の四国電力は全面的に争う姿勢をみせていました。
裁判で主な争点となったのは「地震に対する安全性」と「火山に対する安全性」の2点です。
地震に対する安全性について、原告側は「原発の8km沖合にある中央構造線断層帯について、原発により至近の距離にある地質境界が活断層の可能性がある。活断層を把握するための3次元探査を四国電力がおこなっておらず調査不足」などと主張。一方、四国電力側は「2次元探査で地下の構造は把握できる。原発至近にある地質境界は活断層ではない」と反論していました。
火山に対する安全性について、原告側は「九州で大規模噴火が起きた場合、火砕流や火山灰が運転に支障をきたす可能性があるのに、リスク評価が不十分」などと訴えています。一方、四国電力側は「原発の運用中に巨大噴火が発生する可能性は十分小さい」と主張していました。
5日の判決で広島地裁の大浜寿美裁判長は、「四国電力がそれぞれの事象に対して過小評価しているとはいえず、原子力規制委員会の新規制基準に適合しているとのと審査判断が合理性を欠くということはいえない」と指摘。「原告らの生命、身体、健康等を侵害する具体的危険が生じているということはできない」として原告の訴えを退けました。
判決後の記者会見で、原告側は判決を不服として控訴する方針を示しました。
一方、四国電力は「引き続き、安全性の向上に終わりはないことを肝に銘じ、伊方発電所の安全対策に不断の努力を重ねるとともに、今後の安全・安定運転に万全を期していく」とコメントしています。