開幕まで1ヶ月を切り、カープのローテ争いは熾烈になっています。

侍ジャパンにも選出され、ますます注目を集める2年目の常廣羽也斗が大切にしている投球論に迫りました。

去年、大学ナンバーワン右腕としてカープに入団した常廣羽也斗。

カープが12球団最速でドラフト1位指名を公言し、2球団競合の末、新井貴浩監督が大きなガッツポーズとともに引き当てたことでも話題となりました。

「何年後かにはチームの核となれる投手だと思いますし、またその先には日本代表として活躍できる、そんな素材を持った投手だと思いますので、楽しみにしています」(新井監督)

鳴り物入りで入団した常廣でしたが、去年の春のキャンプはコンディション不良で別メニュー調整でした。

その影響もあり、一軍デビューはシーズン終盤の9月までもつれこみました。

シーズン後半まで首位を走りながらも、失速の試練に直面していたカープ。

重大な局面でのデビューに大きな注目が集まるなか、常廣は見事、プロ初登板・初勝利を成し遂げ、その起用に応えました。

「一軍に上がれる喜びとか嬉しさっていうよりは、やってきたことをまたやってみようっていう。そういう気持ちでした」(常廣)

シーズンオフ、彼は前年の反省を活かし、春のキャンプにスムーズに入るための準備に注力しました。

今年のキャンプでは、シート打撃で3者連続三振をマークし、打者5人をノーヒットにおさえると、対外試合初戦では、ヤクルト打線を2回1安打無失点に抑え、アピールに成功します。

周囲には順風満帆にも思える内容でしたが、本人に満足の表情はありませんでした。

「それ(良い結果)は当然あるんですけど、悪い試合の方ばかり考えてしまうんで。良いときは良いので、それ以上それについて考える必要は無いんで。どう修正するかとか、そっちの方を考えることが多いです」(常廣)

そんな常廣がキャンプで掲げていた課題が「修正力」です。

「基本的にはブルペンでやってきたことは何だったのかとか、そういうことを振り返りながらやるっていうのが大切なんですけど、技術を修正することばかりにとらわれると、それは本当の意味で修正とは言えないっていうか。相手の打者と勝負しながら自分の技術を修正しないといけないんで、技術とメンタルのバランスっていうのは両方大事で、それが一番難しいのかなって思います」(常廣)

「技術とメンタルの両方が大事」。
常廣が技術だけでなくメンタルにまで目を向けるようになったきっかけは、大学時代に遡ります。

「大学生のときも自分の技術でずっと悩んでて、どうしようどうしようって思うこともたくさんあったんですけど、やっぱ人間と人間の勝負で、相手の打者のオーラとか、そういう目に見えないものは絶対あったりして、同じ球速で高めに浮いたボールでも打者が空振るボールと空振らないボールとかがあったりして、そこが意外とピッチャーの本能っていうか気迫の部分だったりして。説明はできないんですけど、絶対大事な部分なので、自分はそういうのが一番大事だなって思っています」(常廣)

昨シーズンの一軍出場はわずか2試合ながらも、ドラフト当日の新井監督の言葉通り、今年、彼は日本代表への切符を掴み取りました。

ここからの侍ジャパン強化試合を開幕ローテ争いの糧とすることができるか。

常廣にとっても勝負の一戦がはじまります。

「大舞台で投げるっていうのは貴重な経験だと思うんで、その大舞台でどういうプレーができるのかとか、どういう気持ちの変化っていうか、マウンド上がったときの気持ちはどういう気持ちだったのかとか、そういうのはやっぱり1軍でも活かしてこれると思うので『どういう』っていう部分を気にしながら投げたいなと思います」(常廣)