「社会に踏み出せない若者に働ける場を作りたい」とオープンしたカフェがあります。好きな時に来て15分から働くことができるなど、ちょっと変わった働き方や取り組みをしています。いつでもやり直しができる社会であってほしいという店主の思いに密着しました。

好きな時間に出勤して15分単位で給料を支払う


ことし5月に愛知県春日井市にオープンした、カフェ「ワン ぽてぃと」。

お芋料理がメニューの中心で、丸ごとのジャガイモにホワイトソースとチーズをのせて焼き上げたトルコの家庭料理「クンピル」やさつまいものティラミスなどが人気です。店の看板犬の「オリバーくん」も人気もので、地域の人の憩いの場になっています。



この店ではちょっと変わった働き方を取り入れています。


アルバイトの松野祐太さん(21歳)が出勤したのは昼。エプロンを着けて厨房に入ります。皿洗いや、片付けなどの仕事をこなし、忙しいランチタイムを乗り切ったところで仕事は終わり。出勤からたった2時間で帰っていきました。

(ワン ぽてぃと・小栗加奈代表)
「来てもいいし来なくてもいいし…来てエプロンつけて仕事をしたかったら15分単位で給料をお支払いしますよって」


店の経営者、小栗加奈さんは「好きな時に来て15分単位で給料を支払う」という働き方を取り入れています。こうして雇っているのは引きこもりや不登校の若者たちです。

(ワン ぽてぃと・小栗加奈代表)
「とにかくプレッシャーをぜんぶ外してみようかなという思い。ひきこもっている子たちは自己肯定感が低いので自分なんてどうせっていう思いが強い子たちがほとんどだと思う。〈わたしって意外とできるじゃない〉〈ぼくってここまでできたんだ〉って思ってもらえたら」

家に帰った松野さんを尋ねると、布団に横になってゲームをしていました。


半年ほど前まで1日中この状態で引きこもっていたといいます。その頃に勤めていたバイト先で、体調を崩したことがきっかけでしたが、自殺を考える事もあったといいます。


(松野祐太さん)
「1日にもう50回から100回くらい、どうやって自殺しようみたいな、自分という存在をこの世から消していなくなりたいっていう気分だった」

そんなときに知ったのが、ワン ぽてぃとのアルバイトでした。

(松野祐太さん)
「家にいても親に迷惑をかけるのが精神的に苦痛で、スタートをきれるものがないかなって思ってた。(小栗加奈店主から)『オリバー(お店の看板犬)の散歩からやってみる?』っていわれて、散歩なら行くかみたいな」

母親から店のことを聞いた松野さんは「犬の散歩ぐらいならできるかな」と店に通うようになり、そこから週1回ほどのアルバイトを始めることにしたのです。


(松野祐太さん)
(はたらいてどう?)「楽しいです、一歩が踏み出しやすい」

松野さんの母親も少し安心しているようです。

(母親・智香さん)
「笑わなかったのが、本当に笑顔がちょっとずつふえてきて、親としては本当に(店に)ありがたい。いままでの中で、いまがすごく親子関係が一番いい気がする。すごく2人で話をします」