熊本大学は、元大学院生が在学中に発表した論文について、盗用などの不正行為があったと認定しました。
熊本大学 富澤一仁理事「申し訳ありませんでした」
熊本大学が盗用などの不正行為を認定したのは、当時、大学院の社会文化科学研究科に留学していた女性が発表した論文です。
熊本大学によりますと、元大学院生は2014年4月から博士後期課程で学んでいて、2018年3月に学内の論文集「紀要(きよう)」に社会文科系の論文を投稿しました。

しかし去年(2024年)7月2日に外部から学内の通報窓口に「盗用の疑いがある」との告発が寄せられ、大学側が直後の7月8日から12月27日に元大学院生から話を聴くなど調査を行いました。
その結果、投稿した論文のうち32か所、合わせて5800字で先行研究の論文などの語句や文章が同じだったとして、先月(2025年1月)23日に不正行為があったと認定しました。
大学側はこの論文について、先月(1月)10日に学内の担当部署に対して取り下げ勧告を行い、その後、取り下げが完了したということです。

元大学院生は、不正発覚前の2022年9月にメンタルヘルスの不調を原因に大学院を自主退学していて、学位を取得していないことなどから、大学側は処分を行わないことにしています。
大学側の聞き取りに対し、元大学院生は「他の大学院生と比べて自分が遅れているとの焦りから盗用をした。いつかはバレると思っていたのでほっとしている」と話しています。
大学は「研究不正が起き、それを防げなかったことは遺憾」としたうえで、「さらなる論文チェックの仕組みの構築や、ソフトウェアの導入などで盗用を発見する制度を整えるように検討したい」としています。
元大学院生は問題となったもの以外に論文は発表していないということですが、大学側はこの元大学生の留学元の国や地域のほか、具体的な論文の内容などは明らかにしていません。
熊本大学では大学院の准教授の男性が2022年に研究室の教え子である大学院生が公表していた研究内容を「独自の研究」として不正に学術雑誌に発表したとして、去年4月に男性を減給の懲戒処分とする不祥事も起きています。