備蓄米放出でコメ価格下がる?

藤森祥平キャスター:
コシヒカリ5kgの価格、気が付けば1年前と比べて1.7倍です。
小川彩佳キャスター:
スーパーでどんどん高くなっているという意識はありましたが、去年は2000円台だったんですね。
小説家 真山仁さん:
大上段で提案したいんですが、「農業は産業か」という問いを語るチャンスが来ていると思っています。国が統制をするものは産業ではありません。自由経済の中で起きるはずのものが産業です。本来そういうふうに見えているのですが、いろいろな仕掛けがあって、欲しい人と買いたい人と売りたい人とのバランスが取れていないのは産業じゃないという部分に根本的な問題があるのではないかなと思います。

藤森祥平キャスター:
専門家に話を聞いたところ、備蓄米を放出して、米の価格がどう変わるのかのポイントになるのは、「放出の量」であるそうです。宇都宮大学の小川真如助教によると、多すぎると価格が下がり、少なすぎると価格は横ばいであまり変わらないということです。一方で、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、国が1年以内に買い戻すというのが原則的なルールになっているそうで、放出すると価格は一旦下がりますが、買い戻すことでまた戻ってくる。高い米を買い続ける逆戻りの現象になるんじゃないかという目線もあるわけです。
小説家 真山さん:
一つ素朴な疑問なんですが、元々の値段が適正なのでしょうか。ずっと前から、農家の人は「米は全然商売にならず、作れば作るほど赤字だ。だけど農家はお米を作らなきゃいけないから作ってる。そういう意味ではもう少し値段のことを考えて欲しい」と言っていた。「その値段でないと米が売れなくなる状況があるから我慢している」とも言っていました。
今4000円になっても買ってくれる人が多い、そうしたら値段は下げないというのが本当の経済です。でも4000円は高いと思うんです。では米の適正価格がいくらかと、誰も議論したことがないんですよ。生産者と消費者のバランスの中で適正価格がどれぐらいかということを、今なら話し合えると思います。
藤森祥平キャスター:
現場ではいろいろ苦労されているようで、国産米が高騰しているということで、牛丼の松屋では去年の5月から、国産米と外国産米のブレンド米を一部店舗で実験的に使用しています。工夫をしているということですよね。
小説家 真山さん:
困ると輸入米を使うのは一つの手だということで、特に商品の値段を上げたくないファストフード系の飲食店だと、技術開発ができているんです。昔のように必ず日本の米を使わなくてはいけないとはなっておらず、これは良いこと。しかし、これは本来値段が下がるはずなのに下がらない。下がらない理由は、出し惜しみしているんじゃないか、それでも買ってくれる人がいるから良いんじゃないかという一方通行の議論ばかりしているからです。
だから、本当は農水省に黙っていてほしいんです。農水省は何もしなくていいので、適正価格について、農家と消費者が同じテーブルで議論する場があると、バランスのいい値段がつきそうな気がします。
藤森祥平キャスター:
農家を守るために国や、色々な政策がされているわけだけど、結局いろいろ入り込んでしまっていると。
小説家 真山さん:
だから、農家は守ってもらっているとは思っていないんです。逆に邪魔されてると感じる人は多くいます。例えば「兼業農家を守ります」と言っていますが、専業農家もいるわけで、専業農家からすると、「兼業農家を守るって…」という人もいる。
食料の問題なので、テレビや車とは違いますが、経済のバランスの中でみんなが納得しなくてはいけないのに、「米はこういう値段で当然」という考えがずっと日本の中にある。だからこういうときに大騒ぎになるのだと思います。米騒動というのは言い過ぎだと思いますが。