日本からおよそ9500キロ離れたフランス領ポリネシアで核実験被害の問題に取り組む女性議員がいます。彼女の名前は、ヒナメラ・クロスさん。自分自身もヒバクシャで白血病を患っています。核兵器禁止条約の第3回締約国会議への参加を前に、初めて広島を訪れました。

ヒナメラ・クロスさん、36歳。マオヒヌイ=フランス領ポリネシアで、2年前から議員を務めています。フランス領ポリネシアでは、フランスによる核実験が193回実施されました。

ヒナメラさんは、議会で、核兵器禁止条約を全会一致で支持する決議を主導しました。

広島の街を歩いている時から、胸に迫る思いがあったというヒナメラさん。被爆から10年後に白血病を発症して亡くなった佐々木禎子さんの像の前では、感極まる様子でした。

仏領ポリネシア ヒナメラ・クロス議員
「彼女は白血病で亡くなってしまったことを思うと、同じ病気を抱えて生き残った自分自身のことを考えずにはいられません」

ヒナメラさんの家族の多くは、がんを患っていて、自身も白血病を発症し、以来、治療を続けながら、2人の子どもを育てています。

先週末に東京で開催された「核兵器をなくす国際市民フォーラム」で、ヒナメラさんは、フランス領ポリネシアの被ばくの実態や、ヒバクシャでもあり政治家でもある自分が核兵器の問題にどう取り組んできたかを伝えました。

仏領ポリネシア ヒナメラ・クロス議員
「何十年も状況が悪化していくのを見ていると、子どもたちの未来はどうなってしまうのか考えるのです。私たちは与えられてしまった影響に対処し続けます。子どもたちやこれから生まれる世代のために、やるしかありません」

小規模な集会では、自身の子どもに、被ばくや病気についてどう伝えたか、など具体的な質問に答えたり、同じように大国の核実験による被害を被った、カザフスタンのヒバクシャたちと情報を共有したりしました。

仏領ポリネシア ヒナメラ・クロス議員
「カザフスタンと仏領ポリネシアは状況こそ違えど、共通点があると感じています。それは、大国が私たちの居住区を植民地化して、核実験を行っていたということです。そして負の遺産として、環境破壊と人々の健康被害が残されています」

ヒナメラさんは、3月にニューヨークで開催される、第3回締約国会議にフランス領ポリネシアを代表して出席しますが、フランス領であるため条約に署名できず、招待枠でのオブザーバー参加となります。

仏領ポリネシア ヒナメラ・クロス議員
「私が(締約国会議に)参加することで、フランスにとって圧力になるように、(核実験で)私たちに起きたことを非難し続けたいです」

核保有国の領土である仏領ポリネシアでさえ、核兵器禁止条約は、議会で全会一致で支持され、ヒナメラさんは締約国会議にオブザーバー参加をします。一方、独立国で、多くの被爆者がいる日本では、政府が条約とは距離を置いていて、締約国会議については「参加を検討中」としています。

2月8日・9日に東京で開催された「核兵器をなくす国際市民フォーラム」では、20以上のプログラムが実施され、会場への参加とオンライン参加で、国内外から約900人が交流しました。また11日には広島で、ヒナメラさんも登壇する国際シンポジウムが開催されました。「核兵器廃絶」の思いは、市民には広がっているようです。