“ライバル”と手を組んだAIエンジニア テクノロジーが行政を変える

それは一人でも多くの都民の意見を集めて、瞬時に分析し、政治に反映させることです。

都はこれまで数万の意見を分析する場合、数か月を要するケースがありましたが、「ブロードリスニング」というAIの技術を導入すれば、わずか数時間で処理できます。

都が安野さんに期待するのは、意見集約を大幅に向上させることです。

都が意見を集めてから1週間。SNSを通じ、2000ほどの意見が集まっていました。

安野さん(2024年11月の第2回打ち合わせより)
「今回はちょっと先の遠い未来っていうこともあって、比較的ポジティブな未来志向の意見が集まっている」

AIが似たような意見を一つのグループとして集め、自動的に色分けします。

都の職員
「本当に多様な、いろんな種類のものが出てきてるなと。それをAIでガッと集約をして分析するのは、我々職員ではなかなかできませんので」

さらに、都民から直接意見を集めようと動物園に。

都の職員(2024年12月)
「お子さんが大きくなったら、どんな東京になってほしいか」

アンケートには、さまざまな意見が寄せられました。

――今、どういう東京にしたいと書きましたか?

都民
「子どもがもっと過ごしやすいようにしてほしい」
「水族館とか動物園とかがたくさん増えてほしいです」
「やっぱり地震とか、不安がありますよね」

こうして集まった意見は約3万件。似たような意見が多ければ多いほど、そのグループの色の範囲が大きくなります。

AIによって処理された意見は、都の長期ビジョンの策定に反映されます。

今回の分析で浮かび上がったのが「子育て」というキーワード。

「子供を産んでも、楽に生活できるような社会になっていてほしい」
「地域全体で子どもを育てる・助け合う街」

そして…

東京都 小池百合子知事
「新たな戦略でありますけれども、子育て、若者、観光そして防災などの分野を新たに設けまして」

新たに「子育て」などを戦略の柱にすることを盛り込んだ、『2050年の都の長期ビジョン』が発表されました。

他にも、AIによって都民のさまざまな声を知ることができました。

安野さん(2024年12月)
「単なる多数決じゃないんだけれども、拾い上げられると良さそうな声を学ぶことができる」

一方、こうして集めた意見を政策に反映し、実行していくのは「AI」ではなく、「人」です。

安野さん
「AIだとできない判断っていうのはやっぱりある。例えば、この地域にとっては良いことかもしれないけれども、別の地域にはものすごく害があることだとすれば、それをやらない方がいいですし。視野を広く、視座を高くする。そのうえで総合的に意思決定する。これは人間の政治家にやっていただきたい」

市民の声を瞬時に分析 AIで“行政革命”起こせるか

上村彩子キャスター:
AIによって短縮できた時間をどれだけ活用していくか。人間同士のコミュニケーションにあてるということもできます。結局、AIをどう活かしていくかは人間次第な気がします。

喜入友浩キャスター:
そうなると、より人間が試される時代になってきます。この取り組みが東京都だけの取り組みで終わるのではなく、ここで得られた知見が全国に広がるといいなと思います。