世代間格差 日本経済に与える影響とは

藤森祥平キャスター:
今回のテーマは、年代ごとにいろんな考えがあると思います。トラウデンさんはどう感じますか?

トラウデン直美さん:
20代の1人としては、伸びることはいいことだと思います。一方で、初任給30万円を「高い」と思う人が多いと、それだけ全体としては賃金が上がっていない。結局、全体の賃金が良くならないと、若い人だけを良くしても、いい循環にはならないと思います。

いまの状況は、多分賃金が純粋に上がったということではなく、人手不足で人材の取り合いになっているんだなと思います。

藻谷浩介さん:
賃金が上がっていない、30万円もらえていない若い人もいっぱいいると思います。東京では(新卒の)年収は400万円くらいになります。これは、欧米で見るとおそらく平均の半分以下ぐらいの水準。つまり日本人全体が非常に安く使われているんです。

藤森キャスター:
もちろん、それぞれの国で物価水準も違うので、一概には言えませんが。

小川キャスター:
VTRでは就職氷河期世代からの「報われない」という恨み節のような声もありました。

藻谷浩介さん:
就職氷河期世代は待遇で非常に割を食っているにもかかわらず、「本人の自己責任でしょう」みたいな言われ方をされることに私は強く憤っています。本当に優秀な人たちが多い世代。ただ彼らにちゃんと十分な給料をあげなかったことにより、その後の日本に大きな悪影響が出ている

藤森キャスター:
就職氷河期世代は約2000万人いるといいます。賃金の増加率はコロナ前と比べると全体としては伸びてます。しかし就職氷河期世代は伸び率が低い、あるいはマイナスになっている。差は歴然です。

藻谷浩介さん:
いろいろな資料でこのような結果が出ています。改めて見ると愕然とします。私の2つ上くらいの世代の待遇を良くするお金があるのであれば、非常に割を食った就職氷河期だけこんなに(賃金の増加率が)下がるのはおかしいですね。

就職氷河期世代は「団塊ジュニア」と言われ、団塊の世代の子どもの世代で人数は非常に多いです。しかし待遇が非常に悪かったために、団塊の世代の孫にあたる世代が生まれなかったんです。これは本人の選択ではなくて、本当は子どもを持ちたい人もいたはずですが、所得が低くて子どもを持てなかった人がたくさんいる。

このことは本人がかわいそうというだけではなく、必ず日本経済を非常に悪くします。就職氷河期世代の待遇を上げないと、いずれ自分たちが苦しむので、大企業の皆さんには考えてほしい。

トラウデン直美さん:
就職氷河期世代はきっとお金の面だけではなく、いろいろな面でやりきれない感みたいなものを持っていますよね。

藻谷浩介さん:
結局就職氷河期の待遇が悪かったことによっていま人手不足に苦しんでいます。その世代の待遇を上げることは世間にとっても利益があります。自分でやったことは自分に返ってくる。大企業の人事の方はこれ(世代間格差)を修正しなくてはなりません。

トラウデン直美さん:
若い人にとっては就職氷河期世代はおそらく上司にあたる世代です。上司が納得感を持って気持ちよく働いていない職場で、果たして若い世代が気持ちよく働けるのかなというところもあります。やはり全体としての底上げが必要かなと思います。

小川キャスター:
世代間でギスギスしてしまうのは最も避けたいところです。時代の風向きやその時々の政策に左右され、煽りを受けた世代があるならば、そこに手当をするのが政治の課題だと思います。

藻谷浩介さん:
これは決して自己責任ではなく、もっと平等になるように企業も政府も意識すべきだと思います。