「彼氏とおそろいのネックレスを」「小遣い稼ぎに」。

安易な動機で闇バイトに手を染め、高齢女性の住宅に侵入しようとした初対面の20代男女。「織田信長」や「明智光秀」といった人を食ったようなアカウント名を名乗る男らに操られ、有罪判決を受けた2人が法廷で語ったのは、後悔の言葉だった。

「人を運べば2万円」突然、居酒屋で見知らぬ男から…

森健太郎被告(25)と佐々木梨花被告(22)が東京・新宿で顔を合わせたのは、2024年9月11日の朝だった。初対面の2人は、互いに秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で“指示役”から命じられ、指定された新宿で落ち合った。2人はレンタカーを借り、栃木県益子町に向かう。途中、ホームセンターに立ち寄り、ガスバーナーと冷却スプレー、金槌を購入。指定された民家にたどり着くと、それらの道具を用いて掃き出し窓のガラスを割り、侵入を試みたが被害者の親族に発見され、駆けつけた警察官に逮捕された。

確保の直前、シグナルで「織田信長」を名乗る“指示役”と電話で通話する森被告の様子を被害者の親族が動画撮影していた。親族はスマホの向こうにいる「織田信長」に問いかけた。

被害者の親族:責任者なのか?
「織田信長」:はい?誰ですか?
被害者の親族:闇バイトを使って何かやっているのか?
「織田信長」:やっていませんけど

とぼけたような様子で「織田信長」との通話は途絶えたが、実行役の2人が犯行に至ったのは、高額報酬を餌にした「闇バイト」がきっかけだった。

森健太郎被告(25)

森被告が被告人質問で語ったところによると、犯行直前の2024年9月上旬、東京・上野の居酒屋を友人と訪れた際、突然見知らぬ男から「人を運べば2万円稼げる」と声を掛けられたという。

裁判官:「人を運んだら2万円」と言われて、どうして受けようと思ったのか?
森被告:“小遣い稼ぎ”という軽い考えでした

連絡先を交換した男は通信アプリのシグナルで「明智光秀」と名乗り、犯行当日は「織田信長」と名乗る別の男から指示を受けた。

検察官:「明智」や「織田」の指示役同士はつながっていると感じた?
森被告:はい。感じました
弁護士:やることは「人を運ぶ仕事」だと言われていたのでは?
森被告:「明智光秀」からはドライバーの仕事と言われていたが「織田信長」から「空き巣をやってもらう」と言われた
弁護士:それはいつ?
森被告:(現場に向かう途中の)高速を降りたタイミングです

森被告は当時、交際する女性と同居していた。その住所などの個人情報を、事前に指示役に送信してしまっていた。 

弁護士:なぜ(犯行を)断らなかった?
森被告:断ったら家をたたく(強盗に入る)と言われ、彼女の身に危険が及ぶと思い、逃げられないと思った。取り返しのつかないことをしてしまった