日本製鉄のライバル米企業「1945年から学んでいない」“暴言”なぜ?
藤森祥平キャスター:
突然一方的に言われて不快な気持ちでしかありませんが、日本に対してなぜこのように吠えているのかおさらいします。

日本製鉄とUSスチールは、買収について“相思相愛”の合意をしています。ここに現れたのがクリーブランド・クリフス社で、一度USスチールには振られています。言ってみれば、地元の幼馴染が恋敵に対して一言物申したくなったという形です。

日本製鉄に対して「全財産を奪ってやる。家も車も犬まで奪ってやる」というような悪口を言っている状況です。この発言に対し、日本製鉄は「ゴンカルベス氏は偏った固定観念に固執し続けている」、USスチール側も「ゴンカルベス氏の言葉による攻撃に非常に失望している」とコメントを出しています。
小川彩佳キャスター:
一方、日本政府はどう対応しているのかと言うと、林官房長官は「個別企業の経営者の発言についてコメントしない」と会見で発言しました。ノーコメント、これでいいのかという思いも湧き上がってきます。

スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京 准教授:
これだけ感情的に、どちらかと言えば扇動主義のような発言をされると、感情で返してはいけないというのはもちろんセオリーとしてあると思っています。
ここですごく気になるところは、意図は何かってことですよね。このCEOの意図は何か。それが例えば自社の優位性を示したいのであれば、それこそ感情じゃないですよね。なぜうちの企業の方がいいのかを論理的に論じればいい。でもそれではなさそうだ。政治的な側面なのかと言うと、政治的な側面で影響って言ったら安全保障。安全保障なのだとしたら、もっと敏感な話になり、それこそしっかり論じなければいけない話。意図が何なのかということはしっかり見ていきたいなと思いました。

小川キャスター:
発言の真意、意図はどこにあるのか。そもそもクリーブランド・クリフスのゴンカルベス氏はどんな人物なのかと言いますと、実はブラジル出身です。会見では「1998年の1月13日、私は妻と3人の子どもと13個のバッグと5万9650ドルしか持たずにこの国に来た」という発言もありました。そこから鉄鋼大手のトップに上り詰めたというわけです。
ここでワシントン支局の涌井さんに聞きます。このブラジル出身の経営者が愛国心を煽るような発言をしました。これはどういうことなのでしょうか?

ワシントン支局 涌井文昌 記者:
今ご紹介があった通り、ゴンカルベスCEOはブラジル出身ではありますが、アメリカの鉄鋼業界で大成功した、いわば“アメリカンドリーム”を掴んだ存在であります。その立場から、アメリカ人の愛国心とか外国資本である日本製鉄の買収に感じている不安感、ここに訴えているのではないかという印象を受けました。
計画の内容自体は日本製鉄が提案している内容に比べて、今報道されているクリフス社の案は見劣りしています。ですので理屈ではなく、感情に訴えるという戦略をとっているのではないかという印象を受けています。
小川キャスター:
戦略的に、感情に訴えているというそういった読みですけれども。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京 准教授:
感情的、つまりは根拠がなかったとしても扇動主義的な愛国心というような言葉を使うのは、レトリックですよね。でもレトリック、つまり何かを説得するのであれば、それこそ感情の中の背景にちゃんとロジックがなくてはいけないのに、ロジックはどこなんですかって言うと、おそらくあまりそこには見えてきている部分がない。一番大事な本質が見えなくなっちゃいますよね。
例えばこういう鉄鋼業ってとても難しい大事なところで、インフラの基盤だとかあるいは軍需産業だとかに発展していくような基盤を作っていくものですよね。そしたらもっと環境に負担が行かないようにするにはどうしたらいいかとか、地球規模で本来解決しなきゃいけないことがあるはずなのに、そういうところがどんどん見えなくなってしまうってことはもったいないなと思います。