「何にも出てないよね!データに!」
この日は、後輩たちの走塁をテコ入れする事に。とはいっても、単に速く走る方法を教えるわけではない。重要なのは、“何を考え、何を考えないか”。
イチロー:
僕はここにいます。この距離が一歩(進塁方向に)出されても塁に帰れる距離です。
< イチローさんが動く >
ここにいるとどう?一歩(進塁方向に)出されると間に合わないでしょ。その距離を覚えておいて。一歩(進塁方向に)出されても頭から帰れば戻れる距離。そうすると牽制の事“考えなくてよい”…これデータ出てるんじゃないの?どうですか?
部員:………
イチロー:
さっきの考え方と同じ。どの動きされても自分は戻れるのだっていう距離を掴んでください。そうすれば後ろチョロチョロされようが、ピッチャー上手だろうが関係ないから…これはデータ出てるの!?
部員:………
イチロー:
何にも出てないよね!データに!大事なデータ、出てないじゃん。
自ら動いて“母校”に伝えたかった事
“データにはない”感性を求める指導には狙いがあった。
イチロー:
(部員は)答えられない。頭、全然、使ってない。まさしくMLB(メジャーリーグ)の野球がそうなっていて、高校野球でこれをやっているのは母校だった。これは言っておかなきゃなっていうチャンスですよね。
イチローさんの高校野球指導では高校生の前でバッティング練習を披露する。これはデモンストレーションではない。決して身体が大きい訳ではないイチローさんが“木のバット”で、なぜあんなに打球を遠くに飛ばせるのか。それを高校生に考えて欲しい、そう願いながら、打ってみせているのだ。
最後にもイチローさんは後輩達に“データにはない”感性の重要性を念押しした。
イチロー:
きょう聞いたことない話ばっかりでしょ。データにない事ばっかり。その感性、大事にしてね。みんな能力、高いのだから…あんまり(データに)縛られないで。とにかく、みんなの動向見ているから頑張って。
熱きメッセージを残し、イチローさんは「じゃあね、みんな」と母校を後にした。














