急激に進む円安と資源高が藩政時代から続く岩手の伝統産業を直撃しています。鉄、電気、コークスなど主要な原価の値上がりに苦しむ南部鉄器メーカーを取材しました。
(リポート)
「オレンジ色に光っているのはドロドロに溶けた鉄です。岩手の伝統産業の南部鉄器が原料の高騰に苦しんでいます」
藩政時代から南部鉄器の製造が盛んな奥州市水沢羽田町。及源鋳造は今年創業170周年を迎える老舗です。
伝統的製法に現代的なデザインを取り入れた製品は国の内外で人気があります。及源鋳造5代目の及川久仁子社長です。
(及源鋳造 及川久仁子社長)
「また上がりますという連絡が先ほど来ていますので大体1.8倍くらいになると思います」
急激な円安と資源高が岩手の伝統産業を直撃しています。
南部鉄器は鉄鉱石を溶かして作った「銑鉄」が主原料です。国内の鉄鋼メーカーから仕入れていますが資源高や円安の影響を大きく受けていて、1年前と比べ1.8倍に仕入れ価格が上がっています。加えて銑鉄を溶かす電気炉で使用する高圧電力の料金は10月から2倍以上に。キューポラで鉄を溶かす燃料のコークスも1.8倍と主な原材料が軒並み2倍近くに跳ね上がっているのです。
主原料の値上げを受け及川社長は10月1日から販売価格を10%から20%上げることを決断しました。それでも終わりが見えない値上げに先は見通せません。
(及川社長)
「原価計算している間に上がってくるのでどんどん。終わったなと思ったらまた上がったみたいな感じになっていて」
斬新なカラーリングが施されヨーロッパや台湾でも人気の南部鉄器。円安によって輸出が伸びるということはないのでしょうか。
(及川社長)
「ロジスティクスですね。船がなかなか捕まらないとか運賃が高くなってることもあって円安一つみて良いとは行かないと思います。頭を完全に切り替えていかないと生き残れない状況だと思います」
原材料やエネルギー価格の高騰に加え世界的なコンテナ不足が輸出の足を引っ張る。正に八方ふさがりです。
新型コロナで海外旅行客も激減する中、一部に伸びている分野もあります。取っ手を外しそのまま皿としても使えるフライパンなどアウトドアで使用する品々です。
(及川社長)
「コロナ禍の中でwebサイトを見てくれるお客さんがすごく増えたと思っていて、あとはソロキャンプのような今までにないマーケットに鉄器を使っていただけるようになったと思っています」
コロナ禍で厳しい状況の続く料理人たちと南部鉄器を使った新たな調理法を探すなど突破口を模索しています。
(及川社長)
「シェフたちはやっぱりクリエーターなのでクリエイティブな気持ちを、私たちもクリエイティブな気持ちで掛け算していくことで生まれるものは楽しいものになると思います」
円安に原料高という経営課題を前に藩政時代からの伝統を未来につなげていくための挑戦が続きます。
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