「このまま意識がなくなって、人間どうやって死ぬのかなって」

バイクと接触した瞬間、骨盤が折れる音がしたという。

オートレースのバイクにブレーキは搭載されていない。

時速100キロ以上でフェンスに激突。体の中で何かがぶつかり合っているような燃えるような熱さと痛みに、体を動かすことさえできなかったという。

「オペ室に運ばれて、麻酔入れられて、時計をみていると、意識がなくなってくるじゃないですか。このまま意識がなくなって、人間どうやって死ぬのかなって。これで目をつぶったら生きて戻って来られないかもしれない。でも目覚めた時にどこにいるのか、ちょっと楽しみでもあったかな」

──死を覚悟して、何か思い残したことが頭をよぎったんですか。

「全く悔いはなかった。日本選手権獲れていなければね、オートレース人生失敗だったのかなって考えたかもしれないけど、日本一になれたので。日本選手権獲れて良かった、もうそれだけだよね」

一度死を覚悟した人間は、ここまで強くなれるのだろうか。
死を覚悟したからこそ、彼はここまで強くなれたのだろうか。