父との最期の会話とは…

隆一さん:
「何してるの」

直哉被告:
「ごめん」

隆一さん:
「捕まるぞ」

直哉被告:
「そうかもしれない」

隆一さん:
「帰れ」

直哉被告:
「はい」

短い会話が終わり、直哉被告は隆一さんの財布を持ち去った。犯人は自分ではなく、金銭目的の強盗だったと見せかけるための工作だった。警察によると、隆一さんの死因は失血死だった。弁護人が質問を続ける。

弁護人:
「犯行直後はどう思った」

直哉被告:
「『もう殺害のことを考えなくても良い』と思った」

弁護人:
「隆一さんはなぜあなたに『帰れ』と言ったのだと思うか」

直哉被告:
「私が捕まらないようにだと思う」

弁護人:
「父はあなたに良くしてくれていたはずだ」

直哉被告:
「はい。私も父が大好きだった」

直哉被告が語った隆一さん殺害の経緯や思考は私たちが理解できる範囲を、すでにはるかに超えていた。