飢えていく小父さんと象
小父さんと象は、だんだん飢えに悩まされていきます。
(昭和天皇の終戦放送)
「堪へ難キヲ堪へ忍ヒ難キ……」
(朗読)
八月十五日に戦争が終わりました、平和になれば象と象使いは人気者です、しかも、日本には他に象が一頭もいなかったんですから。でも、象は小父さんが死に、そして自分ももうじき死ぬと分かった時、紙のように軽い小父さんの死体を背中に乗せ、ひょろひょろと、どこかへ行ってしまいました。
「象使いなど戦争に役に経たぬ。軍需工場で働けと命令されていたのを逃げたのですから、もどればたちまち憲兵か、警察に捕まってしまいます」(文庫本44ページ)ということで、小父さんは山の中で飢えながら象と暮らしていましたが、亡くなってしまうのです。象も痩せてひょろひょろになってしまいます。野坂昭如さんの発想は、すごいですよね。
そして、今流れてきた音楽は、この「おとがたり朗読劇イノチノコト」のテーマ曲です。矢田イサオさんが作曲しました。毎回この音楽が流れて、物語が始まる。バンドネオンがぐーっと入ってくる。こんな風に音楽に乗りながら朗読が行われる、この「おとがたり朗読劇」。2024年の公演は3回目でした。戦争童話集は12話ありますので、「まだまだこれからも毎年続けていこう」とスタッフ・メンバーの皆さんは心を決めています。またご紹介できるチャンスがあったらいいなと思っています。
◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)
1967年生まれ。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリー制作にあたってきた。やまゆり園障害者殺傷事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー最新作『リリアンの揺りかご』は、9月から各種プラットホームで有料配信中。














