作家、野坂昭如が遺した『戦争童話集』の朗読に挑戦しているグループが福岡にいる。若き日に劇団女優だった居酒屋の女将が企画、演奏家たちがそれぞれの楽器で盛り上げる。朗読劇を取材したRKB神戸金史解説委員長が11月12日のRKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』で詳しく伝えた。
『戦争童話集』を朗読する
11月7日と8日、福岡市である朗読劇が催されました。タイトルは『おとがたり朗読劇イノチノコト忘れてはいけない物語』。読むのは、野坂昭如さんの短編12編を集めた『戦争童話集』という本です。毎年2編ずつ朗読していこうというプロジェクトが進んでいて、2022年の初回をこの番組で紹介しました。
野坂昭如著『戦争童話集』(中公文庫、1980年、税別514円)
戦後を放浪しつづける著者が、戦争の悲惨な極限に生まれえた非現実の愛とその終わりを「八月十五日」に集約して描く、万人のための、鎮魂の童話集。
【2022年】「ソルジャーズ・ファミリー」「凧になったお母さん」
【2023年】「年老いた雌狼と女の子の話」「赤とんぼと、あぶら虫」
【2024年】「干からびた象と象使いの話」「ぼくの防空壕」
イラストレーターの黒田征太郎さんも全面協力しています。今回は「干からびた象と象使いの話」をご紹介したいと思います。
”放し飼いの象”がいた
(昭和天皇の終戦放送)
「朕(ちん)深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ……」
(朗読の声)
「昭和二十年、八月十五日
町のはずれから、さらに十二キロ入った山あいの、朽ちた水車小屋の中に、象というには、まことに貫禄のない、しごく痩(や)せた一頭と、年齢性別これまたあまり衰えていて、そのさだかにうかがえぬ一人の男が住んでいました。」
朗読しているのは、リュンコさん。博多区古門戸町の居酒屋「博多うまか遊び庵」の女将さんをしています。そして、構成・演出はCMプランナーの持原淳二さん。福岡で有名なあの「博多通りもん」のCMを長年手がけてきた方です。
【リュンコ(語り)】
1953年西宮市出身。高校卒業後「演劇センター付属青山杉作俳優養成所」を経て、75年、山川三太率いる「劇団究竟頂・銀テント」旗揚げに参加。野坂昭如さんの代表作『エロ事師たち』の登場人物から、芸名を「リュンコ」とする。退団後、96年に福岡市で和食「博多うまか遊び庵」開店。
【持原淳二(脚本・構成・演出)】
1957年生まれ、北九州市出身。CMプランナー・CMディレクターとして43年。「博多通りもん」「マルボシ酢」「人権CM」など、これまでに約1000本以上のテレビしーえむを制作。自身6種類のがんを患い、その体験談を基に講演活動を行う。














