広大な砂漠が広がる海の無い国・モンゴルで、「海水魚を養殖するプロジェクト」が進んでいます。
岡山理科大学などの研究チームが、特殊な水「好適環境水」を使い、陸上の水槽で養殖したものです。RSKは、9月4日モンゴルで開かれたお披露会に同行しました。魚の養殖は、モンゴルでは史上初です。
■モンゴルで振舞われた「陸上育ちの海水魚」


モンゴルの首都、ウランバートル。レセプションホールの厨房では、慌ただしく客を迎える準備が進んでいました。

握りずしにステーキ…モンゴルでは史上初となる養殖魚の味はどんなものか。多くの人が心待ちにしていた日がやってきました。

これがその魚(画像参照)。養殖の開始から約3年、驚くべき大きさに育っていました。

「おお!」
■2019年に始まったプロジェクト「砂漠で魚を養殖します」


広大な砂漠が広がるモンゴル。この国で、岡山理科大学と、土木や建設を主な事業とする静岡県のKITAGAWAの共同研究が始動したのは2019年のこと。

(岡山理科大学 山本俊政 准教授)
「砂漠で養殖をします」


岡山から3000キロを越えてやってきたのは、2種類のハタ科の魚を掛け合わせた「交雑ハタ」。当時はこんなにも可愛らしい姿でした(画像参照)。

陸上での養殖を可能にしたのは、岡山理科大学の山本俊政准教授のチームが研究に取り組む「好適環境水」です。真水に微量のナトリウムやカリウムなどを混ぜたもので、淡水魚だけでなく海水魚も育てることができる、いわば「魔法の水」です。


これまでにトラフグ、クロマグロなど10種類以上の魚介類を世に送り出してきました。
■その使命は「世界的な食糧危機の回避」

解決したい課題の1つに、世界が直面する深刻な食糧危機があります。

(岡山理科大学 山本俊政 准教授)
「天然の資源は先細りしているのは間違いない、水産庁の統計を見ても。そういう中で人口は70億から100億にも達する」
「日本は海に囲まれているから、海でとればいいじゃん、こうなるんですよね。しかしモンゴル、どうですか?この方法しか無いじゃないですか」

■「魚を食べる習慣がないモンゴル」での挑戦
学生たちが交代でモンゴルに渡り、寝食を共にしながらハタの陸上養殖に取り組みました。それは「現地の食文化に新たな風を吹かせる挑戦」でもあります。



モンゴルの食の中心は肉。魚を食べる習慣がほとんどありません。それでも健康志向が高まる中、新鮮でおいしい魚が世に出せれば、受け入れてもらえる、そんな確信がありました。

(岡山理科大学 山本俊政 准教授)
「まず作って、見せて、食べさせてみる...これでしょうね」

ところが、スタートから半年...事業は暗礁に乗り上げたのです。