10歳の時の雪山登山をきっかけに、引っ込み思案だった性格が自信へと変わる

福岡県大野城市に生まれ、幼い頃は控えめな性格で、いじめられたこともあったという渡邊さん。

当時のNPO法人「遊び塾ありギリス」の企画で、小学4年生の時に、八ヶ岳登山を初めて経験、その景色の美しさに登っているきつさは感じなかったそうだ。登頂した時の達成感は格別で、「自分にもできる」と自信に繋がった。

中学1年でパキスタンの4700m登山に挑み、高い所で誰よりも強く動けるという新たな自分の一面を知った。学校から離れた場所に、学びと喜びとコミュニティーがあったのだ。

大学3年生の時、6000m峰のチーム登山に挑戦した際、怪我をした人の救護などを担当する保健係を任されたことで、看護師の仕事に興味を持ち始めた。

これまで8000m峰を28回登ってきた渡邊さん。看護師と登山家を両立させながら、「1年で6座制覇」という驚異的な日本記録も樹立している。

14座登頂の先にある夢「子供たちに冒険を」

ただ、14座制覇は「自分を知ってもらうためのツールに過ぎない」と渡邊さん。自分自身にとってヒマラヤ登山が精神的な支えになっていることはもちろんだが、これまでヒマラヤでの登山やトレッキングをきっかに元気を取り戻し、日本に帰っていった友人を目の当たりにした。登っている苦しさを忘れさせる程の景色の美しさに、魅了されるのだそうだ。

日々の仕事に追われている大人や、精神的に不安定な子どもたちにヒマラヤを感じてほしいと願っている渡邊さん。安心して保護者が子どもを預けられるよう、信頼を得るために、14座登頂を達成させたいと話す。登山初心者でも歩けるコースを考え、「新ヒマラヤトレッキング企画」も年末年始に計画している。8000m峰に約20年通い続けてきた渡邊さんだからこそ提案できる「ヒマラヤ登山の楽しみ方」を教えてもらえそうだ。

高所登山を通して自分に自信を持ち、夢中になれることを見つけた経験を活かし、子ども達にも積極的に冒険を楽しんでほしい、そして、登山に興味がない人にも、山に来て心地よさを感じてもらえるような活動を続けていくことが、今後の夢だと語る。今は、目の前にある「シシャパンマ」登頂と「14座制覇」に向け、一歩一歩前へ進んでいる。

RKB毎日放送 アナウンサー 池尻和佳子