シリーズ『豪雨災害から1か月』


新潟市では排水機能が追い付かず内水氾濫が発生して、140棟以上の住宅が浸水被害を受けました。内水氾濫をどう防ぐのか。新潟市の対策を取材しました。

地面から勢いよく噴き出す水。

走るバスの車内にも水が入り込みました。

こちらではトラックが水に浸かっています。すべて、8月4日に新潟市で撮影された映像です。

東区の山の下市場通りで店を営む高野健次さん90歳です。

【高野健次さん】「そろっと雨が降り始めたなと思っていた程度だったが、15分もしないうちにものすごい雨」

店では餅や和菓子などを製造していて、この日も高野さんは朝から仕込みをしていました。

【高野健次さん】「この辺まで水が来た。車が通ったときの波でもって、ここに冷蔵庫があったのがひっくり返るぐらいだから」

店の前の市場通りは一面に水がたまり湖のようになっていました。高野さんの店は床上まで水に浸かり機械などが壊れて数百万円の被害が出ました。

27歳で店を始めて63年。高齢を理由に、そろそろ閉店しようと考えていたタイミングでの被害でした。

【高野健次さん】「ここまで来たらもうね。(お店を)辞めようって完全に決心がついた。ちょうどこれでけじめがついたなと思って」

東区の山の下地区は市場通りを中心に被害が相次ぎました。
この日は、自治会長の鈴木邦夫さんの立ち合いのもと新潟市の職員が被害認定の調査を行いました。

【山の下町中央自治会 鈴木邦夫会長】「短時間に降ったから、非常に防御することもなかなか難しい状況でただ見ているだけしかなかった」

8月3日からの豪雨で新潟市では住宅41棟が床上浸水、101棟が床下浸水の被害に遭いました。

このうちおよそ9割が東区に集中しています。これは8月4日に新潟市内のポンプ場で観測された1日の降水量です。赤は100ミリ以上の雨が降ったことを示していますが、大山や木戸、山の下など東区の一部の地域に限られていることが分かります。そのほとんどがわずか1時間の間に降っていて、短時間かつ局地的な大雨でした。

【和田隆さん】「降ったのが東区のここら辺、あとは中央区の一部ぐらいな感じで(大雨の被害を)知らない人がやって来て『水なんか出たんですか』ってこんな感じ」

市場通りで生活雑貨店を営む和田隆さんは、商品を安全な場所に移し始めていましたところで想像を超える雨水が入り込み、一部の商品が被害に遭いました。実は、この地域で浸水被害が出るのは今回が初めてではありませんでした。

【和田隆さん】「2回くらいは水が上がってきたことがあった。まあ、それ以前にもあったけど。それに比べると今回が一番水深的には深い」

ちょうど24年前の1998年8月4日、新潟市では24時間で265.5ミリという観測史上最大の雨が降り1万棟以上の住宅が浸水被害を受けました。8.4水害と言われている災害で、山の下地区も大きな被害が出ました。

【和田隆さん】「水害対策きっちりやってくれというのはあるけど。まあまあ限界がありますわな。確かに新潟市のこういう地形ですからね」

多くの地表がアスファルトで覆われている新潟市のような都市部では『都市型水害』が発生します。

地面が土の場合降った雨は地下に浸透しますがアスファルトでは行き場を失います。こうした水の排水が追い付かず河川が氾濫していないのに水が溢れ出すのが内水氾濫です。そして、山の下地区には被害が大きくなりやすい特殊な事情がありました。

土地の低さです。