悪性高熱
奇跡的に誕生したダイレクトアナストモーシスで心臓は回復し、助かったと思ったのですが、ここで悪性高熱になりお母さんは亡くなってしまいます。悪性高熱はX(旧Twitter)でもポストしましたが、日本麻酔科学会ホームページに非常に分かりやすく解説されているので参考にしてみてください。
悪性高熱症はいくつかの麻酔薬の投与をきっかけとしておきる重篤な合併症で、熱は40度を超えてしまい筋肉が崩壊してしまうほど。血液中のミネラルのバランスが崩れて心停止に至ることもあります(天城先生のお母さんもそうでした)。
全身麻酔をうけた患者さん10万人のうち1人から2人に発症するといわれていて、過去は死亡率が70-80%と非常に高かったのですが2000年以降では15%程度にまで減少し、 悪性高熱症に効果的な治療薬であるダントロレンを用いた場合には10%以下とされています。
遺伝的要因で発症する場合があり、全身麻酔の際には患者さんの家族歴を聞くことが重要です。
徳永さんの手術の準備が整い手術は始まるのですが、前回の手術で心臓とその周囲の組織は強固に癒着しています。残った右の内胸動脈を剥離するにもかなりの癒着で難渋。そこで不幸なことに、徳永さんの体温が急上昇し悪性高熱が疑われます。
高階先生は麻酔科医にダントロレンを使用することをお願いするのですが、ダントロレンは用意されておらず、手術開始早々にピンチを迎えます。
通常、ダントロレンは手術室に置いてありますのでご安心ください。この時は前日に悪性高熱疑いの患者さんがいて、使用してしまっており、公開手術の日は休日で追加発注が間に合っていなかったという設定でした。
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イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科
山岸 俊介

冠動脈、大動脈、弁膜症、その他成人心臓血管外科手術が専門。低侵襲小切開心臓外科手術を得意とする。幼少期から外科医を目指しトレーニングを行い、そのテクニックは異次元。平均オペ時間は通常の1/3、縫合スピードは専門医の5倍。自身のYouTubeにオペ映像を無編集で掲載し後進の育成にも力を入れる。今最も手術見学依頼、公開手術依頼が多い心臓外科医と言われている。