世界初の小児に対するダイレクトアナストモーシス
その後、回復傾向にあった天城先生に佐伯教授は公開手術を指示します。天城先生はその時ちょうど冠動脈瘤が見つかった繁野さんのお孫さんの結衣ちゃんに世界初の小児に対するダイレクトアナストモーシスを施行しようとしますが、当日に患者が変更されます。
変更になった患者さんは徳永さんといい、冠動脈の大きな3本の血管(右冠動脈、左冠動脈前下行枝、左冠動脈回旋枝)が全て詰まってしまっており、さらに以前行われた手術により左内胸動脈と足の静脈(大伏在静脈)は全て採取されています。右の内胸動脈だけで全てにダイレクトアナストモーシスを行わないといけない状況です。
ダイレクトアナストモーシスの誕生
手術の準備が進む中、天城先生は世良先生にダイレクトアナストモーシス誕生の時の話をします。
天城先生の育てのお母さんは狭心症で天城先生が手術することとなりますが、前下行枝にバイパスした左内胸動脈が何回縫い直しても血液が流れない絶体絶命の状況。そこで天城先生が思い出したのが真行寺先生の書いたダイレクトアナストモーシスの論文でした。
左内胸動脈をクリップしてメッツエンで切離、前下行枝の周囲を剥離して、ブルドッグ鉗子で中枢と末梢を2本挟み、血流を遮断し切離、採取した左内胸動脈を置き8-0で10〜12針で縫合し糸結びを8回行いメッツェンで糸を切る、これを2回。最後にブルドッグ鉗子を外してダイレクトアナストモーシスは完成したのです。
この一連の流れを本番前に確認した時に、最初は助手がサポートして、器械出しの看護師が道具を出す流れだったのですが、「初めての術式だから周りが付いてこれなくて、全て天城先生で行う感じの方が良くないかな」と話が上がって、確かにそうだよなと私も完全同意。監督も確かにその方が良いよね。となり、天城先生が全て1人で道具を取り、完璧に行うようなダイレクトアナストモーシスの誕生シーンとなりました。
あの一連の流れを一回説明しただけで、本番全く間違えることなく完璧にこなしていて、二宮さんは覚えている感じがしないんですよね。我々外科医は紙に順番を書いたりして何回も復習したり、声に出してクリップ、メッツエン…えーとその次は…みたいに試行錯誤しながら何とか流れを覚えるのですが、そういう仕草もなく準備もなしにスッと手技を覚えてセリフと共に身体に入れるのは、ずっと撮影を見させていただいてますが、本当に不思議です。