8月10日、県の最低賃金を検討する沖縄地方最低賃金審議会は、最低賃金をこれまでより33円引き上げ853円とするよう沖縄労働局に答申しました。

過去最大の引き上げ幅に、街の声は…
薬局の従業員
「生活が皆さんあると思うので、時給が上がるというのはありがたい事だと思います」

アニメショップの従業員
「働いている人としては上がった方が嬉しい。仕事をするうえでモチベーションになる」
工事会社の従業員
「僕が学生のころは600円台だったので、それからみると大分頑張ってくれているかなと思うんですけど、全国に比べると全然安いと思うので、もっと上げてほしいなっていうのはありますね」

喜びの声や、更なる引き上げを期待する声が聞かれる一方で、こんな意見も…。
土産品店の従業員
「物価が上がっているので給料も上げてほしいというのは本音ですけど、経営者の方は大変かなって切実に思います」

実際に一部の企業からは、人件費の増加を懸念する声もあがっています。ビルの清掃や管理業務を行うビルメンテナンス会社の経営者は、最低賃金の引き上げが経営に大きく影響すると話します。
沖縄県ビルメンテナンス協会 武村周児 副会長
「最低賃金が上がりますと我々のとらえ方としてはベースがアップする。今回33円のアップというのが約4%なんですね。そうしますと時給900円の方も当然4%あげていかないと、彼らはまたよそに行ってしまうとか、ということが出てくるもんですから」

最低賃金を下回っていなくても、ベースアップが必要になると話す武村さん。武村さんの会社では、人件費を年間でおよそ2千万円増やす必要があるとのこと。

沖縄県ビルメンテナンス協会 武村周児 副会長
現状の委託料のままですと圧迫ですし、立ち行かなくなるということになります。実際にお客様との契約をこの10月を前に打ち切ろうかと考えている会社も何社かありますね

民間企業から受注する業務は、途中で契約内容を変更することが難しいと話す武村さん。更に、入札で公共事業を請け負うビルメンテナンス事業者にとって、年度途中で最低賃金が引き上げられることは、大きな経営負担につながるといいます。

沖縄県ビルメンテナンス協会 武村周児 副会長
「大体入札が行われるのがその年の2月3月ごろに行われて4月開始となるわけですね。ただ最低賃金については10月の改定になるので、その分の金額が明確になっていないのでオン(上乗せ)出来ないんですよね。だからオン(上乗せ)できないのでその分が持ち出しになる」

このように、入札時に想定していた人件費が年度途中で引き上げられる状態について、審議会は答申でこう述べています。
沖縄地方最低賃金審査会 島袋秀勝 会長
「国及び地方公共団体は、受注者が労働者に対して最低賃金の金額以上の賃金を支払う義務を履行できるよう特段の配慮を行うこと」

国や自治体は人件費の上乗せについて配慮するようにという内容ですが、武村さんが去年、県に対して受注した契約の見直しを求めると、こんな返答があったといいます。

沖縄県ビルメンテナンス協会 武村周児 副会長
「県の方にその際にいろいろと掛け合いました。実際820円(去年の最低賃金)で採用している方はいなくて、ほとんど850円とかじゃないと(就業希望者が)来ないんですが、県は『もう820円超えているから、法律上問題ないから補助はできない』とおっしゃるわけです」

県はあくまでも、最低賃金に届かない労働者の給料の引き上げに関して配慮を行うということでした。武村さんは引き上げ自体は肯定しつつも、企業側への補償を訴えています。

沖縄県ビルメンテナンス協会 武村周児副会長
「最低賃金を上げるということはすごく良いことだと思っています。皆さんの生活が豊かになる、物価も上昇していますので。ただそれを払うだけではなくて、我々もどこかからそれを頂かなくては払えないということがあるので、本当に苦しいのでそこをぜひ見ていただきたいと思っています」

最低賃金の改定は10月6日から適用となる予定です。今回の答申では沖縄県を含む10件が853円で、全国で最も安い金額となりました。今後さらなる引き上げを期待する声もある一方で、経営負担を強いられる経営者の訴えは届くのでしょうか。