「どんな政治家がどう動いたか」が見える総裁選報道

そして、どんな政治家がどんな理由で、どんな政治家を総裁として選ぶのか、また関与しているのかをつぶさに見ることも必要です。報道によれば、麻生さんは、あのトランプ前大統領から「タフネゴシエーター」と評価されている茂木さんの支援要請を、自派閥に河野さんがいることを理由に断ったとされています。最も早く立候補を表明した小林さんのもとには、派閥を超えて支援の動きが出ていますが、裏金事件の中心である旧安倍派の議員が多くいたようです。

最も注目されているのは小泉進次郎さんで、立候補の意向を固めたことがテレビ・ラジオのトップニュース、新聞各紙の一面で大きく扱われていました。菅前首相は小泉さんを推しているとされていますが、同じ神奈川県選出で親しいということよりも、小泉さんが当選することによって主流派になることを考慮していると報じられています。

小泉さんについては、毎日新聞出版が発行する週刊誌・サンデー毎日で、自民党政調会長の森山さんのインタビューを掲載しています。小泉さんが環境大臣のみの経験で、自民党三役を務めていないことをとらえて「賢明な判断をされるのではないか」と述べていましたが、森山さんにとっての「賢明ではない判断」にならないか、今後の動きが注目されます。

これらはいわゆる「政局報道」といわれるもので、外から見れば全くの政界の事情であり、国民不在の動きとみることもできます。ですから、冒頭のように「マスコミが騒いでいるだけ」と見られがちで、それみられるのも仕方がないとも考えます。

しかしながら、これによってどんな政治家がどう動いたかを見ることができます。これは秋にもあると予想される総選挙での、重要な判断材料になります。自分が住む選挙区の政治家が、どんな理由でどんな政治家を推したのか。政治家が政治家を選ぶ、つまり国民が直接投票できない自民党総裁選挙だけに、その選挙権を持つ議員を選ぶ選挙の際の判断材料にすることが重要だと思います。

9月には、野党第1党の立憲民主党の代表選も行われます。アメリカ大統領選も11月の投開票へ向け、高齢のトランプさんと50代の女性ハリスさんとの激烈な争いが進んでいます。誰がトップにふさわしいのか、を自分なりに考えながら見ていけば興味も深まってくると思います。

「政治家不信」をどう解消していくのか。個人としての政治家をみるよい機会になると思いますので、ぜひとも興味を持って報道に触れていただければと思います。

◎山本修司(やまもと・しゅうじ)

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。