四大公害病の一つ『イタイイタイ病』の患者で、唯一生存していた富山市の90代の女性が今月亡くなりました。被害者団体のイタイイタイ病対策協議会によりますと、生存者がゼロになったのは初めてだということです。
イタイイタイ病は、四大公害病の一つで、患者が「イタイ、イタイ」と泣き叫ぶことからこの名が付いたといわれています。神通川上流にある岐阜県飛騨市にある神岡鉱山からカドミウムが排出され、神通川の水や流域を汚染しました。汚染された農地に実った米や水などを摂取することで引き起こされました。カドミウムの慢性中毒によって、まず腎臓障害が発生し、次に骨軟化症を引き起こします。

被害者団体・イタイイタイ病対策協議会によりますと、亡くなったのは富山市に住む93歳の女性で、2年前の2022年8月に富山県からイタイイタイ病患者として認定を受けたということです。

富山県は、1967年からイタイイタイ病患者と認定すべきかどうかを判断する審査会を毎年開いていて、これまで201人を「イタイイタイ病」と認定。最後に認定したのがこの女性で、生存しているのはこの女性1人でした。
イタイイタイ病対策協議会によりますと、富山県が患者認定を始めてから生存者がゼロとなるのは初めてだということです。

イタイイタイ病対策協議会江添良作会長「生存する1名の患者も亡くなったということで、まさにイタイイタイ病というのは『過去の病気』だという捉え方をされると思うわけですが、そうじゃないんだと。患者がいなくなってイタイイタイ病の意義とか、そういうものはなくなるわけでも風化するわけでもないですから、われわれとしてはより一層努力していく必要がある」

一方、将来イタイイタイ病になる可能性を否定できない「要観察者」はこれまで345人で90代の女性1人が生存しています。
富山県は、イタイイタイ病が多発した神通川流域に居住する住民を対象に健康調査を毎年行っています。
認定患者がいなくなったことを受けて新田知事は「神通川流域の住民の健康を守るために環境省とも協力しながら健康調査を1人でも多くの方に受けていただけるよう受診勧奨を継続してまいります」とコメントしています。