コロナ禍の第7波で、救急搬送がひっ迫する中、それを一部補う存在が「民間救急車」です。


介護タクシーを活用したこの民間救急車の過酷な業務に密着しました。

全身防護服でワゴン車を運転する男性。


後ろのストレッチャーに乗せられているのは、新型コロナの患者です。

(運転している男性と患者のやりとり)
「何かありましたか?大丈夫?」

この車は、コロナ患者を専門に運ぶ「民間救急車」。

新型コロナで救急搬送がひっ迫し、名古屋市は市内の介護タクシー事業者に、民間救急車としてコロナ患者の搬送を委託しています。


搬送が終わった後は車内をくまなく消毒。使い捨ての防護服は、全ての作業が終わった後、ようやく脱げます。

(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「正直暑くて苦しいが、感染防止を重視して着ている」

業務中は、車内で待機して要請を待ちます。

ドライバーの佐藤さんは介護士。もう1年半近く、民間救急車の仕事を続けていますが、第7波に入り搬送件数が急増していると言います。

(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「いまは1日に(全体で)20件とか、もろに第7波の影響を感じる」

この日も次々に要請が…

(電話する佐藤さん)
「ストレッチャー…酸素1リットル…、もう向かった方がいいですか。わかりました」

症状が軽くなった患者を別の病院へ移す依頼。重症病床を空けるための、こうした転院の搬送も増えています。

しかし、より深刻な状況も。

(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「最近では、入院できずに自宅に帰るパターンが多い。歩けなくなって、呼吸ができなくなっていても、家に帰してしまうパターンもある」

救急車で病院へ行っても入院できず、自宅に送り返される人を運ぶことも。

(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「実際に(入院できず)、自宅まで帰られたあとに亡くなってしまう事例もある。つらい」

コロナ患者の搬送を始めてから、1人暮らしになりなかなか家族とも過ごせない佐藤さん。


(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「家に行っても、玄関先で会って終わりだとか、息子の部活の試合に行けなかったりとか」


それでも…
「患者さんが元気になる姿を見たら、やっぱりうれしさを感じるし、マスクが取れる、笑顔が見れる日常にしたい」

午後8時半。雨の中、人工透析を受けたコロナ患者の男性を、病院から家へ送り届けます。

(患者に話しかける佐藤さん)
「ごめんなさい。雨が降っているのでちょっとぬれますけれど」


(民間救急車ドライバー 佐藤憲一さん)
「誰かに必要とされていることに、誇りを持ってやっている。雨にも負けず、コロナにも負けず、頑張っていきたい」


第7波で更に忙しさを増している、コロナ患者搬送の民間救急車。いつ終わるかもわからないコロナ禍で、佐藤さんはこれからも車を走らせます。