脱炭素社会の実現を目指す手段の一つとして注目されているのが、風車を海の上に設置する「洋上風力発電」です。環境などへの影響を懸念する声もありますが、九州大学は独自に開発を続けてきた「レンズ風車」を洋上に展開し、新たな取り組みを進めています。

◆「洋上風力研究教育センター」開設

九州大学洋上風力研究教育センター 福田晋センター長「脱炭素社会の実現と洋上風力に新たなイノベーションを起こしていく」

九州大学で今月開かれたシンポジウム。世界最高水準の研究と人材育成を目指す「洋上風力研究教育センター」の開設を記念するものです。

◆「風車をつなげる」欧州で注目

陸上では風車に適した場所が限られる日本で、脱炭素社会を実現するための切り札と考えられているのが洋上風力発電です。風車の先進地イギリスから、オンラインでシンポジウムに参加した第一人者が紹介したのは一風変わった風車です。


ストラスクライド大学 ピーター・ジェミエソン氏「マルチローターシステムは、広い海域において効率よく、大容量でクリーンな展開が可能だ」


多くの風車をつなげたものはマルチローターシステムと呼ばれ、ヨーロッパでも注目を集めているということです。

◆九州大学も開発「マルチ風車」

このマルチローターシステム、九州大学も開発を進めています。


九州大学 大屋裕二教授「このマルチローターシステムは、集合することによってより出力が上がります」

◆「レンズ風車」で効果アップ

九州大学の大屋裕二名誉教授が、開発を続けてきたレンズ風車。輪っかを付けることで、後ろに「渦」ができて気圧が低くなり、風の流れが速くなるため、羽根が勢いよく回転して発電量が増える仕組みです。


これを複数組み合わせると、風車の後ろの渦がより大きくなり、発電量が増すということです。


大屋裕二教授「3個よりも5個、5個より7個と、たくさんマルチの輪っか付き風車を並べたほうが風を集めるんですよ。風を集めるから、出力もシングルのレンズ風車の時よりも10%も20%も30%も上がったりするわけですよ」