佐伯教授、渡海先生の登場シーン

渡海先生は結局来ず、佐伯先生が登場し、佐伯式で患者さんを救います。

「では感染部位を切除して弁形成を行う」
「やっぱりすごい。本当にこの人は神様だ」
神がかった手技であっという間に弁形成を行ってしまいました。

この佐伯教授の手術室への登場シーンですが、両手のひらを下に向けて、ゆっくりと登場します。渡海先生は手のひらを自分側に向けて、肩くらいの位置で登場してきます。

我々外科医は手を洗い、手を消毒して手術室に入りガウンを着ますが、その手術室に入ってくる時の出で立ちは様々で、手をパンパン叩いてくる先生や、ゆらゆらと手を揺らしながら、消毒を乾かしながら登場する先生などいろいろいます。

あの佐伯教授の登場シーンと全く同じ登場の仕方をする先生がいました。私が1年目の時の心臓外科の部長の先生がそうでした。手術室にまさにあの格好で入ってきて、ガウンを着るのですが、手術室に入ってきた時の緊張感というか、威圧感は恐ろしく、別に怒るとか、機嫌が悪いとかは全くないのですが、他を圧倒する抑圧感は、自分が今まで感じたことがないものでした。

撮影が始まる前に1話の手術シーンのリハーサルの時に内野さんと相談したのですが、いろいろな登場の仕方がありますが…といろいろやってみたところ非常にあの登場の仕方を気に入っていただけました。

渡海先生の登場シーンのあのポーズは、二宮さん本人も言っているようにいわゆるブラックペアンポーズで、佐伯教授と同様、他を圧倒する抑圧感を持ち、悪魔的であり、切れ味の鋭さ、緻密で精緻的手技の象徴であります。

一方佐伯教授の登場シーンは、鉄人かつ哲人の抑制が効いていて、他のすべての外科医が言葉を失い手技に見入るほどの圧倒的なパワーの象徴のように感じます。
渡海先生は密かにブラックペアンポーズの流行を狙っているらしいですよ。僕はすでに影響され、あのブラックペアンポーズで手術室に入っています。

次回は小春ちゃんの手術の解説です。

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イムス東京葛飾総合病院 心臓血管外科 
山岸 俊介

冠動脈、大動脈、弁膜症、その他成人心臓血管外科手術が専門。低侵襲小切開心臓外科手術を得意とする。幼少期から外科医を目指しトレーニングを行い、そのテクニックは異次元。平均オペ時間は通常の1/3、縫合スピードは専門医の5倍。自身のYouTubeにオペ映像を無編集で掲載し後進の育成にも力を入れる。今最も手術見学依頼、公開手術依頼が多い心臓外科医と言われている。